県の基幹系システム刷新で、メインフレームとUNIXからの移行という大型案件。手を挙げたのは高知電子計算センター1社だったが、提案に厳しい評価が下され、総力を挙げて挽回に動いた。

 「もっと具体的に提案してもらえませんか」。高知県情報政策課長の伊藤博明にこう言われ、高知電子計算センター(KCC)の情報事業本部営業部副部長、篠田浩一は少なからず動揺した。

 年も押し詰まった2005年12月下旬のことである。県の基幹系システム再構築プロジェクトを受注できたかと思いきや、内容が具体性に欠けるとして“ダメ出し”され、再提案を求められたのだ。

 県のプロジェクトとは、メインフレームとUNIXサーバーに分かれている基幹系システムを一本化するというもの(図1)。つまり、基幹系を全面的に作り直す大型案件である。

図1●高知県の基幹系システムの再構築の流れ
図1●高知県の基幹系システムの再構築の流れ
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表●高知県がシステム再構築を高知電子計算センター(KCC)に発注するまでの経緯
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表●高知県がシステム再構築を高知電子計算センター(KCC)に発注するまでの経緯

フタを開ければ応募は1社

 発注先の選定を、県情報政策課は公募型プロポーザル方式で進めていた。11月16日の公告から1カ月の公募期間内に提案依頼書(RFP)などの資料を受け取りにきたのは、ある大手ITベンダーとKCCの2社。ところがフタを開けてみれば、手を挙げたのはKCCだけだった。

 通常は評価委員会の審査を経て受注が決まるのだが、再提案を求められたとあっては話が変わる。優れた提案を出せなければ、公募は仕切り直しになる。KCCにとって県は売り上げの多くを占める大口顧客だけに、この案件を受注できなければ会社の存続にかかわる。再提案で失敗することは許されなかった。

 県がRFPで求めていたのは、主にメインフレームからのダウンサイジングによる運用コストの削減と、重複投資を防ぐための全体最適化だった。KCCの提案は、移行先のハードウエアのプラットフォームとして当時まだ出てきたばかりのブレードサーバーを採用し、Windows Server 2003で動作させること。そして、メインフレームで動かしていたCOBOLアプリケーションをそのまま流用するという内容である。

 ブレードサーバーを選んだのは、コスト削減効果や設置効率もさることながら、新技術の採用に挑戦したい気持ちが少なからずあったからだ。KCCはメインフレーム時代、メーカーの下請けとして運用を任されていたので、プライムSIerとして収益源の多様化を図りたいとの思惑もあった。