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“有事”に強い危機管理の哲学

“有事”に強い危機管理の哲学(前編)

~飲料ビジネスと企業ブランドを守り抜いた経験から~

2009/01/15 ITpro

 ここ数年、大規模な自然災害やシステム障害、商品の品質・産地偽装など、企業の事業継続を脅かす事故・事件が相次いでいる。新型インフルエンザへの警戒感も強まってきた。
 ここでは、企業のリスク・マネジメントにかかわる読者に向けて、イベント「エンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)2008」(2008年8月20~22日)から、危機管理/広報コンサルタント 山根一城氏の講演の模様(抜粋)を2回にわたってお伝えする。山根氏はかつて、日本コカ・コーラの広報担当副社長として、飲料ビジネスと企業ブランドを守るべく危機管理の総責任者を務め、現在は危機管理/広報コンサルタントとして活躍している。その経験に裏打ちされたメッセージから、危機管理に対する哲学を汲み取っていただきたい。(ITpro編集部)


危機管理/広報コンサルタントの山根一城 氏
[画像のクリックで拡大表示]

 皆さん、こんにちは。これから危機管理の基本的な考え方やポイントを、一般の方にも分かるようにお話ししたいと思います。通常なら3時間くらいかかる盛りだくさんの内容を短時間でコンパクトにお伝えしますので、よろしくお願いします。

 まず「危機管理」という言葉について考えたいと思います。実は、私はこの言葉が好きではありません。なぜかというと、危機は管理できないものだから。管理できないから危機なんです。

 皆さん、よく危機という言葉を頻繁に使われますが、これは英語でいうとクライシス(Crisis)やパニック(Panic)です。クライシスやパニックは、日常的なビジネスの習慣や経験では、全く対応できないものを指します。例えば、大地震に見舞われるとか、会社が倒産するとか、不祥事を起こして記者が200人ぐらい押し寄せてくるとか、そういう状態が危機です。

 危機というものは、まず管理できない、どうにもならない、と思ってください。危機は企業が用意周到なときに来るわけではありません。いきなり来るんです。

 じゃあ、危機管理のプロが会社にいれば大丈夫なのでしょうか?いいえ、これもダメです。危機はいきなり、危機管理の“素人”の皆さんのところにやって来るから、パニックになるんです。

人も会社も必ずミスを犯す

 「BCP」(Business Continuity Plan、事業継続計画)という言葉があります。私がかつて日本コカ・コーラで危機管理の責任者を務めていた当時、BCPの策定が最優先であり、その中に危機管理を位置づけていました。すなわち、危機というものは、単に事件や事故を指すのではなく、事業継続を妨げるもの、としてとらえるべきなのです。まずそこをよく理解してください。

 もう一つ大事なことは、人も会社も必ずミスを犯す、ということです。“完璧な人”や“完全な会社”など存在しません。だから必ずミスや事故が起こるんです。完璧と思って安心すると、そこに落とし穴があるということです。

 どんな会社でも社内に色々な問題を抱えていますが、その問題の扱い方次第で、大きな危機に発展してしまうことがあります。その例として、最近、毎日のように新聞の社会面をにぎわしている企業の不祥事について考えてみましょう。

 このような不祥事のおそらく90%近くは、内部告発によって明るみになったものです。内部告発は一般に「自分が所属する会社やグループの不祥事は許せない」「良くなってほしい」という社員の切実な思いから出たものです。しかし、社内で声を上げても取り合ってもらえず、一向に事態が改善されない。そうなると「刺し違えでいいから、成敗してくれ」という気持ちになって、社外へ告発してしまうんです。

 これは会社へのロイヤルティ(忠誠心)の高さからの内部告発と言えます。会社の危機管理の問題として、そのことをよく考えれば、いきなり内部告発されて危機を招くような事態を避けることができるはずなんです。

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