以下に掲載するコラムは、2006年5月15日付で日経ビジネスオンラインに公開した『「記者1.5」を目指し、動画像と双方向性を活用』の再掲である。このコラムは、『「Web2.0」から「社員2.0」と「企業2.0」へ、そして「社会2.0」』の続編に当たる。「1.5」や「2.0」が乱用されており、みっともないが、そのまま再掲する。読み直してみると後半に出てくる読者とのやり取りの中で、筆者は「成功例をご紹介していきたい」、「引き続き取材をしていきたい」と繰り返し書いている。それから2年半が経ったが、読者との約束はあまり果たせなかった。紋切り型の表現で恐縮だが、「引き続き」取り組んで「いきたい」。

(谷島 宣之=経営とITサイト編集長)

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 「2.0にひっかけた君の原稿、なかなか面白かった」。

 「ありがとうございます。ちなみにどのあたりが?」。

 「『社員2.0』のところ。あの表を印刷して壁に張ったよ。あ、悪い、君の書いたところではなかったなあ」。

 「…」。

  少し前、弊社の経営陣の1人と上記のやり取りをした。2.0にひっかけた原稿から、サン・マイクロシステムズがまとめた「社員1.0」と「社員2.0」の比較表へリンクを張った。くだんの弊社幹部は、筆者が書いた原稿ではなく、サン・マイクロシステムズの表の方にいたく感心したわけである。

 幹部の発言を受け、筆者が沈黙している様子を冒頭でご紹介したが、この部分は創作である。実際には次のような会話が続いた。

 「確かに、あの表はよくできています。ある取材先から教えてもらったので、日経ビジネスオンラインの読者の方々に紹介しようと思ったのです」。

 「インターネットの時代になって、我々の仕事は変わらざるを得ないな。記者が優れた原稿を書くことはこれまで通り必要だけれども、インターネット上に公開されている面白い情報や、専門家の知見を見つけ出し、それらを読者に紹介することが我々の重要な仕事になるね」。

 「我々ではなく、誰でもできますが」。

 「確かに誰でもできる。だからこそ我々は目利きとしての力を養っていかないといけない」。