英ボーダフォンが新興市場に相次いで進出している。近年特に積極的なのがアフリカやアジアである。南アフリカ,ケニア,エジプトなどに続き,2007年にはインドの携帯電話事業者に出資。2008年にはガーナの事業者への出資に合意して,同社初となる西アフリカへの進出を実現。新興市場での地歩を固めつつある。
(日経コミュニケーション編集部)
ボーダフォンの2007年度業績は,東欧や中東・アフリカ・アジアなどの新興市場(以下,新興市場)の売り上げが大幅な増収となっている。同社は今後の成長戦略の一つとして「新興市場における力強い成長」を掲げており,買収や出資を通じ成長の期待できる新興市場へ積極的に進出する考えである(図1)。
新興市場の売り上げが大幅上昇
ボーダフォンが新興市場へ積極的に進出する背景には,携帯電話の人口普及率が100%を超え,成長が減速する西欧市場の補完が急務となっていることが挙げられる。実際,欧州各国における携帯電話の人口普及率は,英国122%,ドイツ117%,イタリア153%などとなっている。一方,新興市場ではエジプト42%,インド21%,トルコ80%などとなっている(いずれの数値も2007年度末時点。出典はボーダフォン2007年度年次レポート)。
契約数は西欧においてもまだ伸びているものの(図2),同社の2007年度業績を見ると欧州市場は前年度と比較して6.1%の増収にとどまったのに対し,新興市場は45.1%の大幅な増収となった。これにより同社の全売り上げに占める新興市場の割合は,前年度の21%から26%に上昇。その重要性は年々増している。新興市場のエリア別売上高では,ルーマニアなど東欧が27.3%,オーストラリアなど太平洋地域が17.6%の増収。インドを含む中東・アフリカ・アジアが前年度と比較して177.3%の大幅な増収となった。

買収や出資で新興市場へ進出
ボーダフォンは,買収や出資を通じてこれまでにポーランドやチェコ,ハンガリー,トルコなどの東欧諸国,南アフリカ,ケニア,エジプトなどに相次いで進出している。2007年5月には,ハチソン・エッサール(現ボーダフォン・エッサール)への出資により,インドへの進出を果たした。こうした一連の動きが同社の業績を押し上げる要因の一つとなっている。これらの市場の多くに共通するのは,西欧市場と比較して携帯電話の人口普及率が低いこと。これに加え,今後経済成長が見込めるため,ボーダフォンにとって非常に魅力的な市場となっている。