「ビデオ会議を導入して出張回数を減らせば,ビジネス活動に伴うCO2排出量とコストを大きく削減できる。この導入効果をツールを使って“見える化”していく」――。2008年10月14日に開催したグリーンITフォーラムで,ポリコムジャパンの奥田智巳社長が講演し,同社が提唱するグリーンITソリューションについて解説した。

 ITを活用して業務プロセスを変革し,環境負荷を削減する取り組みは「Green by IT」と呼ばれ,有効な温暖化対策として注目されている。こうした取り組みの代表例が,ビデオ会議や遠隔教育などのソリューションだ。

 「米国では,すでに多くの企業が,環境対策とコスト対策の両方の狙いからビデオ会議システムを導入している」と奥田氏は現状を報告する。「例えば,プライスウォーターハウスクーパースは,ビデオ会議システムの導入によって,2007年度に飛行機による移動量を延べ177万km削減し,198トンのCO2排出量を削減したと発表した」(同氏)。

 ポリコム社内でも,同社のビデオ会議システムを活用してCO2削減に取り組んでいる。同社は全世界に40を超える拠点があり,約2600人の従業員が働く。そこに社内利用として800台以上のビデオ会議システムと,12台の多地点会議用の接続サーバーを設置し,ビデオ会議やWeb会議などをグローバルに実施している。

 「ビデオ会議システムを利用するときに事前に予約する必要はなく,参加者が集まればオンデマンドでいつでも会議を開催できる。平均すると,1日当たり200~300もの会議が全世界で開催される。まだ定量評価は行っていないが,かなりのCO2排出量削減に貢献しているはず」と奥田氏は説明する。このグローバルなビデオネットワークは,北米,アジア,欧州,南米の各エリアに1人ずつの合計4人のITエンジニアがサポートしている。

ビデオ会議の環境貢献を数値で“見える化”

 ポリコムでは,ビデオ会議の導入によって環境負荷を削減するためのコンサルティング・サービスを提供している。「現状調査から導入プランニング,導入後の効果測定・分析までを一貫して支援する」と,奥田氏は強調する。

 現状調査では,顧客のビジネス形態に応じ,ビデオ会議を戦略的に活用するためのガイドラインを作成する(Polycom Performance Benchmarking Assessment:パフォーマンス評価サービス)。次いで導入プランニングでは,必要なネットワーク・インフラを決定し,CO2排出量削減効果を高めるための設置方法や利用方法を策定する(Polycom Green Assessment Service:エコ評価サービス)。「最大の効果を得るため,ネットワーク構成や会議の実施方法,運用体制,会議の手法や手順を策定し,CO2削減量の基準値を定義する」(奥田氏)。

 効果測定にはいくつか方法がある。ここでは,ポリコムのパートナ企業である米Visual Environment社が開発した「Video Miles」というソリューションを紹介した。この方法は,PCや多地点接続装置(MCU)など,ビデオネットワークを構成するコンポーネントの情報をすべて登録し,稼働状況を逐一モニタリングするというもの。会議の利用パターンや使用状況のデータを取得したうえで,社員の移動距離やCO2の削減量などに換算し,環境負荷とコストの両面から投資対効果を割り出す。算出結果をもとにグラフを作成し,時系列で導入効果を「見える化」する機能もある。

 「Video Milesは現在は米国と欧州で先行リリースしており,日本でもまもなくサービス提供を開始する。環境対策は継続的な取り組みと改善を目指す姿勢が重要であり,当社自身が模範となって結果を示していきたい」と,最後に奥田氏は意気込みを語った。