筆者は,米国シリコンバレーに住んでいるため,chumbyが日本国内で発売された2008年10月より前に,chumbyを手にする機会を得ました。シリコンバレーでは,2008年春ごろからchumbyが話題になり,自分用や日本の友人へのお土産用として多くのユーザーがこの時期にchumbyを購入しています。私もその1人です。
その後,ネット上のブログなどでchumbyブームに火がつき,日本でも国内正規代理店が登場するより一足早くchumbyを入手しようと,米国から並行輸入したり,数十人でchumbyを共同購入して輸送費を安く上げたりするユーザーが現れました。
今回は,chumbyブームの火付け役となったエンジニアやコア・ユーザーを4人紹介します。
1人目:宮川達彦さん
chumbyブームに火をつけたエンジニアの1人が,サンフランシスコに拠点を置く米Six Apart社の宮川達彦さんです。宮川さんは2008年,日本人として初めてPerlコミュニティへの多大な貢献が認められて「白駱駝」賞を受賞したエンジニアで,日本でPerl関連の数々のイベント企画などに携わっていることでも知られています。
そんな宮川さんは,新しいモノ好きの“ギーク”としても有名です。自身のブログ「blog.bulknews.net」の2008年3月8日のエントリ「chumby がすばらしすぎる件」(http://blog.bulknews.net/mt/archives/002230.html)でchumbyを紹介しています(写真1)。
chumbyを入手した直後にもかかわらず,宮川さんはこのエントリでネットワーク上に接続されているMacの「iTunesライブラリ」を再生する手順を紹介しています。その数日後には,chumbyのオフィシャルフォーラムで,ナイト・モード(LCDの輝度を落としている状態)のchumbyで音楽を再生すると,段階的にボリュームを落としていって最後は音楽の再生を止める「Goodnight chumby」スクリプトを紹介しています(http://forum.chumby.com/viewtopic.php?id=1985)。
同じ時期に,自作したウィジェットを公開するエンジニアは米国に多数いましたが,深く突っ込んだハッキング方法をいち早く公開したところが宮川さんのスゴイところです。chumbyフォーラムには,宮川さんがエントリを投稿してから9カ月近くたった今でも,多くのユーザーから賞賛のコメントが寄せられています(写真2)。宮川さんのエントリを見て,「私もchumbyが欲しい!」「ハッキングしてみたい!」と思ったユーザーは米国や日本を問わず多いことでしょう。
先日,サンフランシスコに行った際,宮川さんと直接会う機会を得たので,chumbyにまつわる色々な話をお聞きしてきました(写真3)。
宮川さんによると,chumby内蔵のLinux上で動くソフトウエアの開発(ウィジェットの開発ではない)は,内蔵ハードウエアやインストールされているモジュールの制約が多い点が悩ましいそうです。開発したソフトがたとえ動いても,その後ファームウエアの更新があると全く動かなくなってしまうこともあった,と言います。
アプリケーションを開発するプラットホームとしてchumbyを見た場合,chumbyの出荷後にSDKが公開された「iPhone」の方に,多くの開発者の興味が奪われているのではないかと宮川さんは指摘します。
新しい物好きの宮川さんの興味は,既にchumby以外のガジェットに移っていました。残念ながら,最近はchumby関連のソフト開発は行っていないそうです。