「余計な仕事を増やさないでほしい」「忙しいから手伝えない」――。改善活動に対してこんな後ろ向きな雰囲気がはびこると,成功はおぼつかない。チーム全体で積極性を高めるにはどうすればよいか。三つの方法を紹介する。

 ある中堅ソフトハウスでのこと。社長の肝いりで全社的に改善活動を行うことになった。A氏は改善リーダーとして,他部署のチームの改善活動を推進する役目を任された。

 意気込んだA氏だったが,改善チームのメンバー9人全員がそろって参加したのは,初回のミーティングだけ。2回目こそ8人が参加したが,3回目からは「忙しいから」という理由を付けて半数以上が欠席するようになった。そのうちほとんど誰もミーティングに参加しなくなり,改善活動は立ち消えになった。

 「思えば,初回のミーティングがまずかった」とA氏。「余計な仕事がまた増えた」などと不満を漏らすメンバーが何人かいた。まるで自分が責められているように感じたA氏はあえて聞き流し,文句を言わない一部のメンバーとだけで改善テーマの設定などを強引に進めた。

 チームがばらばらになったことで,当初は意欲的だったメンバーの積極性が損なわれてしまった。そして最終的に改善活動そのものをとん挫させることになった。「メンバー一人ひとりの意欲を引き出してチーム全体がまとまるように努めるべきだった」とA氏は悔やむ。

メンバーの積極性が生命線に

 このように,チームで改善活動を始めたが,メンバーが積極性を失い,いつの間にか立ち消えになるというケースは少なくない。「改善活動は現場のチームが主体となる自主的な取り組み。それだけにメンバーの積極性が生命線となる」(改善コンサルタントの市川享司氏)。

 しかしチームの中には,改善活動に前向きなメンバーがいる一方で,後ろ向きなメンバーもいるもの。チームの全メンバーを巻き込んで,一体となって改善活動を推し進めて行くのは簡単ではない。

 では,どうしたらよいのか。まず必要なのは,メンバー一人ひとりが改善活動の意義をしっかりと認識することだ。市川氏は「現状に満足せず自分たちのチームの付加価値を高めていくために改善活動に取り組む,ということが腹に落ちるまで理解する必要がある」と語る。

 そうして意識付けをしたうえで,改善活動を進めていく。その際に,メンバー一人ひとりの積極性を高めるための工夫がある。現場の改善リーダーや改善コンサルタントへの取材を通して浮かび上がったのは,「全員参加型で進める」「工夫して褒める」「成果を実感する」という三つのポイントだ。以降で一つずつ見ていこう。