日経ソリューションビジネス
編集長
中村建助
日経ソリューションビジネス編集長 中村建助

 2009年は、「サバイバル」という言葉が意味を持ってくる。不況によって、多くの企業の業績が悪化していくなかで、成長よりも生き残りを重視する時代が始まる。

 ITベンダーや情報システム部門は、企業のサバイバルに役立つソリューションを提案、企画することが強く望まれるようになるはずだ。企業が生き残っていくために重要なソリューションとは、少しでも利益を増やす、あるいはキャッシュフローの状態を改善させるものである。コストの削減と事業効率の改善が従来以上に重要になる。

ITで代替できるものを探す

 コスト削減のためのソリューションを考える際に重要なのは、短期間で確実に実現することだ。

 この条件を満たすものに、注目したいのがビデオ会議システムがある。ビデオ会議システムを使えば出張を減らせる。全国に拠点のある、あるいは遠隔地の取引先がある企業であれば、ビデオ会議システムを使って確実にコストを削減することが可能だ。

 最近、ある大手外資系ベンダーの方と話す機会があったのが、この企業ではデモ用にも使っているビデオ会議システムを、実際に業務で利用することが増えているという。海外出張のコストを削減する意識が強くなったことが理由だ。

 印刷関連コストの削減も注目すべきテーマである。調査会社の米ガートナーによると、トナーや用紙など印刷関連に費やすコストは、企業の売上高の1~3%を占めているという。

 高性能の複合機が登場してきた中で、カラー印刷や片面印刷による出力を簡単に禁止することができるようになった。印刷を薄くすることでトナーの使用量を減らすソフトも登場している。社内印刷に関連するITは急速に進化しているといえる。

 徹底して紙の利用を減らすという選択肢もある。オフィスのフリーアドレス化やノートパソコンの支給によって、ほぼ紙なしで業務を進めているITベンダーも存在する。フリーアドレス化は、オフィスの省スペース化、つまり家賃の削減にもつながる。劇薬ではあるが提案する価値はある。

 印刷関連コストを精査して節約に努めている企業はそれほど多くはない。使ってきた金額の多さを意識さえすれば、すぐさま削減に動く企業は少なくないだろう。

 用途は研修に限られるが、交通費・紙関連コストの双方を削減できるということで、eラーニングに対する関心も高まってくるだろう。

営業効率を高めて収益を拡大させる

 利益を上げる方法は何もコスト削減だけではない。見込み客の数を増やし、さらに購買意欲の高さを知ることができれば、営業効率を高めて売り上げを伸ばすことができる。

 顧客を分析する比較的安価なソリューションが、企業にとってより重要になるわけだ。ハードの高性能化に伴って、顧客分析のアプリケーションは、以前よりかなり安価に利用することができるようになった。

 Webの普及によって、見込み客を見つける方法が変わっていることを強く意識する必要がある。Webサイトを有効活用した見込み客の増加、販売チャネルとしてのオンラインストアの強化も、企業にとっての検討課題だ。厳しい不況のなかでも、米国のオンラインストア最大手であるアマゾン・ドット・コムや楽天のビジネスが好調であることを忘れてはならない。

 実はこれらのソリューションについては、日経ソリューションビジネスの2009年1月15日号で詳しく触れている。サバイバルのための選択肢を示せるソリューションプロバイダだけが、自らも生き残ることができる。

 今年も、「最適のIT提案を示すためのNo.1雑誌」で有り続けるために全力を尽くしたい。

日経ソリューションビジネス
ソリューションを提案する営業・SEのための唯一の専門情報誌。毎月15日・30日発行