一つの問題に対して,対策が必要な原因が多数見つかったとき,そのすべてには手を打てないことがある。そのときは,対策を打つべき原因の優先順位を付けなければならない。その際に不可欠なのが「量的インパクトを考える」視点である。優先順位を付けるには,成果などの「量的インパクト」を加味する必要があるからだ。
そこで,ここでは量的インパクトを見積もるためのチャートを二つ紹介する。
(6)パレート図
QC七つ道具の一つとして知られている「パレート図」。量的インパクトを見積もるチャートの一つ目は,これである。
もともとは「不良原因」を分析するために考えられたチャートで,品質不良の原因を層別した棒グラフを値の大きい順に並べ,さらにそこに重ねて累積百分率を折れ線グラフで示したものだ。
対策を打つべき原因の優先順位を付ける場合にどう使うのか。あるITの現場では「プロジェクトが遅延する」という問題を改善するため,次のような使い方をしていた。
まずメンバー全員で,あるプロジェクトが遅延した原因を「要件定義で仕様が固まらなかった」「開発ツールにバグがあった」といった具合に洗い出し,主要なものを抜粋した。そのうえで,各原因によってそれぞれ何日の遅延につながったと思うかを話し合って決めた。さらに,それらの原因を「要件定義の問題」「開発ツールの問題」といった具合に大まかに分類し,話し合って推定した遅延日数を分類ごとに積算した。そうして図12のようなパレート図を作成した。これによって,この現場ではプロジェクト遅延の原因の8割が要件定義と開発ツールに集中していることが明らかになった。
パレート図は「2割の原因が8割の量的インパクトを与えていることが多い」という「パレートの法則」とともに知られている。つまり,2割の原因を解決すれば8割の成果を得られる,という考えだ。本当に力を入れるべき2割の原因はどれか。それを見極めるためにこのパレート図を使いこなそう。
(7)滝グラフ
米マッキンゼー・アンド・カンパニーが考案した「滝グラフ」。これを二つ目のチャートとして取り上げる。
滝グラフはパレート図と違って,損益のようにプラスとマイナスの値を取るデータを扱うときや,時系列の変化から意味を読み取る場合に効果を発揮する。例えばあるプロジェクトにおいて,工程でコストの予算と実績の差異を追っていくようなケースだ。プロジェクトが,A~Dという四つの工程に分かれていてそれぞれ当初計画で1億円ずつの予算を配分していたとしよう。プロジェクトが終わったとき,A・C工程ではそれぞれ1000万円と100万円のコスト余剰が出て,B・D工程では800万円と200万円のコスト超過が出たときの滝グラフは図13のようになる。滝グラフを使えば,どの工程に問題があるか,視覚的に把握しやすい。
また一つのプロジェクトだけでなく,複数のプロジェクトの滝グラフを書いて比較する,という分析も有効である。大半のプロジェクトでC工程がコスト余剰なのに,あるプロジェクトだけがコスト超過になっているとすれば,何らかの問題があることを示唆している。滝グラフを使うと,こうした特に重大な問題がある場所を読み取りやすい。
アイデアクラフト 代表