次期BSデジタル放送(2011年7月以降のBSデジタル放送)の委託放送業務の認定に関する制度整備案を,総務省が2008年11月28日に公表し,同整備案に対する意見募集を開始した(期間は2009年1月5日まで)。今回の制度整備案は,(1)特別衛星放送(BSデジタル放送と東経110度CS放送)の制度関係,(2)マスメディア集中排除原則関係,(3)高画質化関係,(4)番組の多様化関係──など7項目に分かれる。大筋では,総務省が2008年7月31日に公表した「委託放送業務の認定に関する基本的方針」に沿った内容だが,注目すべき点がいくつかある。

 1点目が,文部科学省が所管する「放送大学学園」の参入が事実上決まったことである。放送大学の番組は現在,直接受信(DTH)では地上波放送と東経124・128度CS放送「スカパー!」経由で放送されている。関東地方では地上波放送(UHF帯の周波数を利用)で,その他の地域では東経124・128度CS放送「スカパー!」で視聴できる。全国のケーブルテレビ(CATV)でも放送されている。

 ただし,これらの放送プラットフォームは視聴できる世帯が少ない。「生涯学習の普及」や「都市と地方の情報格差の是正」などを目指す文科省は,放送大学の視聴可能世帯を増やすために次期BSデジタル放送に参入し,HDTV(ハイビジョン)放送を行うことにした。こうした文科省の要望を受けた総務省は,「内容を精査したうえで,一般の参入希望者とは別枠で参入を認めることにした」(衛星放送課)という。これにより事実上,参入枠が一つ減ったことになる。

 2点目が,比較審査の基準として「広告放送時間の比率」が具体的に示されたことである。無料放送チャンネルにおける1週間の放送時間のうち,広告(CM)放送(通販番組を含む)の比率が30%を超える場合は,可能な場合に限りチャンネルを割り当てるという。この基準に従うと,無料の24時間通販チャンネルは比較審査で優先順位が下がる。基準をクリアするために広告放送の比率を30%以下にすると,現行の衛星放送のCM料金の水準などから考えて,事業として成り立たせるのが難しい。無料チャンネルでの参入を希望している事業者のハードルはかなり高くなったといえる。

 「広告放送30%以下」という基準は,今回の比較審査で使用するものであり,無料放送を行っている既存のBSデジタル放送事業者(民放キー局系5社と日本BS放送,ワールド・ハイビジョン・チャンネル)には適用されない。そのため意見募集では,「新規参入事業者だけに適用するのは不公平」という声が上がる可能性が大きい。比較審査の基準には,「1週間の放送時間のうちHDTV放送の比率が50%を超え,その比率が多い方を優先する」といった項目もある。これらの項目は,有料チャンネルも含めて新規事業者に適用される。