森田 宏
日本ヒューレット・パッカード

 x86サーバー(PCサーバー,IAサーバーとも呼ばれる)は間違いなく,世の中にもっとも広く普及しているサーバーである。台数ベースでみると,サーバー全体のほぼ8割程度を占めている。そしてx86サーバーは,非常に技術変化の激しい製品でもある。各サーバー・メーカーは四半期に一度というペースで,新技術を搭載したx86サーバー製品を出荷し続けている。

 特に2003年から現在までの5年間,x86サーバーの世界ではかつてなく激しい技術革新が起きた。そのため,製品のスペック情報を読み解くための前提事項も大きく変化している。

 本連載「知っておきたいサーバー機の基礎」では,過去5年間のx86サーバーの技術的進化の流れを振り返りながら,各コンポーネントに関する最新の技術動向を解説する。読者のみなさんに,最新の製品スペックを読み解ける知識を身につけて頂くことが目標だ。

進化の方向が,がらりと変わった

 1つひとつのコンポーネントの話題に入る前に,サーバー全体の技術動向をみていこう。

図1●サーバーを構成する主要コンポーネント(写真は2003年製の2Uラックマウント型サーバー)
図1●サーバーを構成する主要コンポーネント(写真は2003年製の2Uラックマウント型サーバー)

 図1はラックマウント型サーバー(2003年製)の内部である。プロセッサ,メモリーなど,x86サーバーの基本的なコンポーネント分類は,20年前に「PCサーバー」(当時)が登場してから今に至るまでほとんど変わっていない。

 ちなみにブレード・サーバーが登場したのは2002年。つまり5年前には既に登場しているので,ブレード・サーバー分野でも新旧比較が可能だ。

 もちろん,各コンポーネントの性能や機能は,この5年間で大きく向上している。中には,進化の方向性を大きく転換し,それがサーバー全体の進化の方向性にも影響を与えたコンポーネントが複数ある。

 「プロセッサ」はその典型例だ。進化の方向を「動作周波数の向上」から「マルチコア化」に大きく転換した。それに伴い,動作周波数でプロセッサの性能を推し量ることは難しくなった。

 さらに,x86サーバーの利用形態やx86サーバーを取り巻く外部要因の変化も,見逃せない。例えばx86サーバーで仮想化技術を使ってサーバーを集約することは, 2003年当時は一般的でなかった。また,以前はほとんど意識されなかった「消費電力」が,今やサーバー製品を比較検討する上で無視できないスペックとなっている。

 この連載では,こういった利用環境やユーザーのニーズの変化による影響についても,触れていく予定である。