韓国の検索エンジン「NAVER(ネイバー)」をご存じでしょうか? NAVERは1999年6月にサービスを開始しました。2003年にはYahoo! Koreaを追い抜き,同国の検索市場でトップシェアを獲得した韓国最大の検索エンジンです。

 日本におけるインバウンド(訪日外国人)マーケティングにおいて韓国人をターゲットにしているのであれば,韓国NAVERは欠かせない媒体です。2008年9月には日本に本格的に上陸を果たしました。日本での韓流ブームを受けてか「enjoy Korea」という日本と韓国の文化をつなぐポータルサービスの提供を開始しました。翻訳機能や日本語キーワードで韓国サイトを検索できるサービスが充実しています。

 韓国NAVERの特徴について見ていきましょう。韓国NAVERはポータルサイト色が強く,ウェブページ検索よりも,知識検索,Blog検索,コミュニティ検索が盛り上がっています。そして,提供された検索コンテンツを受動的に利用するよりは,ユーザー同士が共同で作り上げる参加型コンテンツに対する一般ユーザーのニーズが高いようです。検索結果にもこれらユーザー参加型のコンテンツが広告の次に出てくるようになっています。

 韓国のウェブサイトは一般に,リッチコンテンツ,フラッシュが多く,ウェブにエンタテインメント性を求める韓国ユーザーの特性が見てとれます。そして,ほとんどのリンクが「別ウィンドウ」で開くようになっています。韓国NAVERの検索サイトも例外ではありません。試しにNAVERで検索して見てください。検索結果から他のウェブサイトへのリンクはもちろん,NAVERサービス内へのリンクも「別ウィンドウ」で開きます。

 SEM(検索エンジンマーケティング)に関しては,GoogleやYahoo!と同じように,SEO(検索エンジン最適化)とP4P(検索連動型広告)が存在します。

 SEOでは,ロボット型検索エンジンを採用しています。独自の検索ロボット(クローラー)「Yetibot(イエティボット)」が存在し,検索結果のウェブサイトの順位を決めるための情報を集めています。

 P4Pでは,2つの広告枠が採用されています。「パワーリンク(A power link)」と「ビーズサイト(Beads site)」と呼ばれる広告です。パワーリンクはオーバーチュア(Overture)が提供している検索連動型広告の“スポンサーサイト”広告のことです。一方,ビーズサイトはNAVERの独自広告となっています。

 検索結果画面について,P4Pの広告枠とSEOの自然検索結果の画面占有率が,GoogleとYahoo!とは大きく異なっています。

 まず,上部にP4Pが画面の6割程度も占めて表示されます。2スクロールしてやっと自然検索結果が出るといった具合です。

 情報を求める検索ユーザーは,この検索結果画面についてどう考えているのでしょうか。SEMを扱う私たちの視点からは,以下の仮説を挙げることができます。

  • 検索ユーザーの検索エンジンに対するリテラシが低い場合,P4P(検索連動型広告)部分が広告だと気づいていない可能性がある。
  • 検索ユーザーのリテラシが高い場合,上部に占められている,P4P(検索連動型広告)によって得られる情報ではなく,自分の検索にマッチした精度の高い検索結果(欲しい情報)を求められる可能性がある。
  • 検索エンジンの精度が発展途上のため,現在は広告が上部に出ている可能性もある。
  • ユーザーの検索リテラシと検索エンジンの精度が向上すれば,いずれはP4P部分よりも自然検索結果の割合を増やす可能性もある。

 韓国NAVERは韓国で利用されている検索エンジンですから,韓国の検索ユーザーに向けて最適化された検索エンジンのはずです。日本国内から韓国NAVERに対して行うSEMについては,日本人感覚をいったんクリアしなければ見えない部分も多いでしょう。私たちは現地事情に密接したグローバルマーケティングを成功させるために,GoogleやYahoo!といった検索エンジンに慣れ親しんできた日本人感覚を意識的に切り替えて研究を進めていきたいと考えています。

本コラムは,アウンコンサルティング海外(英語圏・中国語圏)マーケティング総合情報サイト【CBM-ch】に連載中の「旬感マーケティング~グローバルマーケティングブログ~」を再録したものです。同サイトでは,海外(英語圏・中国語圏)SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。
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