「シンクライアントと仮想デスクトップを導入すれば,ワークスペースの電力消費量を大きく削減できる」――。2008年10月14日に開催したグリーンITフォーラムで,仮想化ソリューションを提供するシトリックス・システムズ・ジャパン マーケティング本部 パートナーディベロップメント シニアマネージャーの村上愼一氏が講演し,オフィスの省電力化の重要性とその方策について解説した。

 「グリーンITと言えばデータセンターの省電力化というイメージがあるが,一般のオフィスの省エネは,より重要な課題だ」と村上氏は主張する。その理由は,PCとサーバーの出荷台数にあるという。「サーバーの出荷台数は年に50万台程度であるのに対し,PCは1500万台と約30倍にもなる」と村上氏は説明し,オフィスで使用するパソコンの省電力化の重要性を訴える。

仮想デスクトップがオフィスの省エネの決め手に

 それでは,オフィスのグリーンITはどのように進めればいいのか。「一つの解になるのがシンクライアント」と村上氏は答える。シンクライアントを導入する第1のメリットは,冷却用ファンやディスクを持たないため,消費電力を低減できること。第2のメリットは,製品のライフサイクルが長いこと。ファンやディスクという駆動部分がないので,故障が少ないからという。「このような環境対策以外にも,セキュリティ面,管理・運用面から見ても,シンクライアントの導入メリットは大きい」(村上氏)。

 さらに,シトリックスのサーバー仮想化ソフト「XenServer」と,デスクトップ仮想化ソフト「XenDesktop」を採用すれば,「省電力化は一層進む」と村上氏は明言する。XenDesktopは,Xen仮想マシンを使ってサーバー上で「Windows Vista」を複数動作させ,そのVistaの画面を,シンクライアント側から遠隔操作するというソフト。ユーザーが使用するアプリケーションやデータ,ハードウエアをサーバー室で一元管理できるので,より効率的に消費電力を低減できるという。さらに,「サーバー室で管理されたデスクトップ環境をユーザーが使用することによって,シンクライアントの課題であった操作性の悪さや動作が重いといった問題点も解決できる」(村上氏)。

 シンクライアントを導入すると,オフィス環境の省電力化は進むが,クライアントのデータを集約するデータセンターの電力消費が増えるという懸念がある。これに対し村上氏は,「XenDesktopにはOSやアプリケーションのイメージをプロビジョニングする機能がある。つまり,1個のマスターイメージを管理するだけで,他のすべてのPCの仮想環境を立ち上げられるため,ディスク容量を効率化できる」と話し,データセンター側の電力消費量が大幅に増えることはないと説明する。

 「仮想化ソフトのオープン化がシトリックスの使命。XenDesktopは,Hyper-VやESX Serverなど他社の仮想化ソフトもサポートする。オフィスにシンクライアントと仮想デスクトップの環境を構築して,グリーンITを実現してほしい」と村上氏は最後に語り,講演をしめくくった。