自社オフィスからデータセンターまでの距離は,必ず意識したい。近距離なら,データセンターに出向く際に移動時間を抑えられる。これが遠距離だと,作業時間は短かったとしても移動に時間を取られ,結局は半日あるいは1日仕事になってしまう。多くの企業は本社が都心部にあるため,距離が近い,すなわち同じ都心にあるデータセンターは高い人気を誇る。

 サーバーにリモート・アクセスできるなら,現地に出向く機会はほとんどないと思うだろう。確かにその通りだが,あるECサイトの担当者は,「サーバー設置や移設,ケーブリングの変更といった,現地に行かないと実施できない物理的な作業をすることが年に何度もある」と証言する。

 また,システム障害発生時は,システム担当者と開発を担当したシステム・インテグレータの担当者が,サーバーが設置されたデータセンターで,原因分析や復旧作業を一緒に実施することが多い。あるメーカーのシステム担当者は,「本社の近く(=都心に)にデータセンターがあると,自分もシステム・インテグレータの担当者もすぐに駆けつけて,復旧作業に入れる。移動時間が短い分,復旧時間も短くなる」と語る。

 どれだけの移動時間なら問題ないかは,ユーザー企業によって異なるだろう。取材では,おおむね30分以内と答えるユーザー企業が多かった。システム障害時の迅速復旧が不可欠な金融システムなどを運用する企業は,短い時間を答える傾向があった。また,30分は公共交通機関を使った場合の時間と答える企業もあれば,「自社が24時間物品を購入できるサイトを運営しているので,公共交通機関が動いていない真夜中の障害対応も可能なよう,タクシーでの移動時間を基準にしている」という企業もあった。