ソリューションプロバイダ各社が、資格を取得した時に支給する一時金の平均額(一時金を回答した企業の平均値)はどうか。ここでも、公的/非ベンダー系とベンダー系に区分して資格を見ていこう。

 公的/非ベンダー系資格の中で、一時金が最も高かったのは、「技術士(情報工学部門)」である(表3)。一時金は24万900円だ。5年連続で首位を守った。

表3●資格取得時に支給する一時金の平均額(公的/非ベンダー系)
平均金額が多い順に30資格を示した
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表3●資格取得時に支給する一時金の平均額(公的/非ベンダー系)<br>平均金額が多い順に30資格を示した

 技術士は、受験資格として4年以上のIT業務の実務経験が必要で、試験の難易度も高いとされている。これらの点を考慮し、ソリューションプロバイダは、技術士の取得者に手厚く報いていると考えられる。

 2位も前回と同じく中小企業診断士で、一時金は23万4900円だった。

 3位にはプロジェクトマネジャー向け資格の「P2M資格制度 プロジェクトマネジャー(PMR)」が入った。回答件数は2社と他の資格より少ないものの、一時金は21万5000円だった。P2M資格制度は、NPO(非営利団体)の「プロジェクトマネジメント資格認定センター」が2002年から実施している。

21資格の一時金が減った

 公的/非ベンダー系資格の一時金は、前回に比べて大きな順位変動はなかった。目立つのは、上位30資格のうち21資格の一時金が、若干とはいえ減っていることだ。

 4位の「情報処理技術者試験 システムアナリスト」は前回比2%減の21万5000円、5位の「同システム監査技術者」は同4%減の19万4300円である。

 特に落ち込みが激しかったのは、「技術職に取らせたい資格」と「営業効果」で首位になった「情報処理技術者試験 プロジェクトマネージャ」。一時金は17万9800円で、前回の21万5000円に比べ、11.3%減った。

 同資格は、これまでの調査で毎回、前回よりも一時金が上昇し、順位も着実に上げていた。ところが今回は一時金が下がり、順位も落とした。

 この理由は、以前に比べ、手厚い一時金を出さなくても、従業員が自発的に同資格の取得に動いていることだ、とみられる。プロジェクトマネジメント関連のスキルを身に付けることは、ソリューションプロバイダの担当者にとって必須になってきたといえそうだ。

 「技術職/営業職に取らせたい資格」や「営業効果」で順位を大きく上げたITIL資格も同様だ。ITIL資格の一時金は、前回から24%ダウンの6万3800円。前回は8万3800円だった。

 こちらも、プロジェクトマネジャー関連の資格と同様、会社側が“人参”をぶら下げなくても、従業員が自ら取得に動くようになってきたと考えられる。

 一時金が全体的に落ち込んだからといって、ソリューションプロバイダが資格を軽視し始めたわけではない。「従業員の資格取得により発生するコストは、以前と変わらない」(ユニアデックスの神戸技術教育室長)。これと同様の意見を述べる人事担当者は多い。

 本調査では、「取得や維持に必要な費用を補助しているかどうか」も、資格ごとに質問している。これによると「補助している」と回答した割合の平均は36%で、前回の34%より増えている。

 一つ、考えられるのは資格取得のためにかける資金の使い方の変化である。ユニアデックスは今年8月、資格取得者に対する一時金支給制度を廃止。その代わりに、以前よりも多い約160資格を対象に、研修費や試験代などの経費を負担するようにした。「従業員の資格取得に対するインセンティブを高めるには、一時金を支払うよりも、資格取得にかかる実費をきっちりと負担することの方が効果的だと考えている」(ユニアデックスの神戸室長)。