ヴイエムウェアは仮想化ソリューション「VMware Infrastructure 3(VI3)」を拡張し,「Virtual Datacenter Operating System(VDC-OS)」に発展させる(図1)。拡張の方向は,「アプリケーション(Application vServices)」「インフラストラクチャ(Infrastructure vServices)」「クラウド・コンピューティング(Cloud vServices)」の三つ。従来の「VMotion」などの機能に加えて,新たに20を超える新機能を2009年から順次,提供していく(表1)。

図1●Virtual Datacenter Operating System(VDC-OS)の構成<br>現行のVMware Infrastructureを,「Application vServices」「Infrastructure vServices」「Cloud vServices」という三つの方向で拡張する。
図1●Virtual Datacenter Operating System(VDC-OS)の構成
現行のVMware Infrastructureを,「Application vServices」「Infrastructure vServices」「Cloud vServices」という三つの方向で拡張する。
[画像のクリックで拡大表示]
表1●Virtual Datacenter Operating System(VDC-OS)で提供予定の新機能
[画像のクリックで拡大表示]
表1●Virtual Datacenter Operating System(VDC-OS)で提供予定の新機能

 VDC-OSはその名が示すように,データセンターの基盤を担うことが目的の製品群。データセンターを丸ごと仮想化したうえで,コンピュータ・リソースをユーティリティ化する「クラウド」へ進めるという,同社が描くシナリオの要となる。

 Application vServicesでは,堅牢なデータセンターを構築するために「Availability」「Security」「Scalability」を向上させる機能を付け加える。例えばAvailabilityを高めるための機能「Fault Tolerance」を新たに提供。物理サーバーに障害が発生した際に,その上で稼働していた仮想マシンの処理を,別のサーバー上の仮想マシンに切り替える。これまでも「VMware HA」で可用性は向上できたが,この機能は障害発生時に別のサーバー上で仮想マシンをリスタートさせるだけ。これに対してFault Toleranceは,待機系の仮想マシンを稼働させ,本番の仮想マシンと処理の同期を取っておくことで障害に備える。またScalabilityでは,「Hot add」や「Very Large Virtual Machines」といった機能を加え,データセンターで求められるスケーラビリティを向上させる。

 Infrastructure vServicesは,仮想環境の構築に欠かせないネットワークやストレージなどの最適化を図るもの。「vCompute」「vStorage」「vNetwork」という三つの分野で,サードパーティの協力も得ながら,性能や使い勝手を高めていく。vStorageでは,「Thin Provisioning」や「Linked Clones」を提供し,ストレージの利用効率を上げる。また「vStorage APIs」を使えば,VMware ESXのストレージ管理にサードパーティが機能追加できる。vNetworkに含まれる「Distributed Switch」は,複数のVMware ESX間をつなぐ仮想スイッチを作成するためのインタフェース。これはサードパーティに対しても提供される。

クラウド間の連携を推進する

 VDC-OSはクラウドでの利用もねらう。同社は,「社内でクラウドを構築し,そこに社外クラウドを連携させる」というシナリオを描く。これを推進するのがCloud vServicesである。まず,VDC-OSの自動化や拡張を可能にするAPIセット「Cloud vServices APIs」を提供。次に,「VMware Readyプログラム」として,このAPIを利用した製品やソリューションの開発をサードパーティに促す。さらに,OSやアプリケーションを仮想マシンにまとめる「仮想アプライアンス」でシステムのポータビリティを高める。具体的には,「vApp」と呼ぶ仕様に沿って仮想アプライアンスを作成することで,どのVDC-OS上でも動作できるようにする。vAppに準拠した仮想アプライアンスは「VMware Studio」と呼ぶツールを使って作成できる。

 また,従来の管理ツール「VirtualCenter」は「vCenter」に名称を変更し,それに合わせて新機能を加える。「vCenter ConfigControl」はVDC-OSの構成を自動管理する機能。「vCenter Capacity IQ」は仮想マシンやリソース・プール,ひいてはデータセンター全体のキャパシティの最適化を図る。

 「vCenter AppSpeed」は,アプリケーションのレスポンスを監視し,自動的にリソース配分を調整する機能。これまでは,仮想マシンのCPU使用率などに基づいて調整していた。レスポンスを指標に加えることで,よりユーザーの体感に近づく。あらかじめレスポンスのしきい値を決めておき,それを下回ったことをトリガーに,自動で仮想マシンにリソースを追加したり,仮想マシンを増やしたりすることが可能だ。仮想マシンを追加する場合,それを立ち上げるサーバーは自社内か社外かを問わない。これが同社が目指すクラウド・コンピューティングの一つの形である。