米セールスフォース・ドットコムがクラウドの「ハブ」になりつつある。アマゾン、フェースブックという有力事業者と相次ぎ提携を発表。両社のサービスを相互利用可能にした。今年4月にはグーグルとも提携しており、それと合わせて、企業向けクラウド基盤の首位固めを目論む。

写真●米セールスフォースのマーク・ベニオフCEO
写真●米セールスフォースのマーク・ベニオフCEO
「クラウドであなたの企業を変革する」と呼びかけた

 11月3日(米国時間)からサンフランシスコで開催されたセールスフォースの年次総会「Dreamforce 2008」。今年の主題はズバリ「クラウド・エキスポ」である。「企業向けのクラウドを牽引するのは我々だ。あなたのビジネスを動かす基盤は、今ここにある」。マーク・ベニオフ会長 兼 CEO(最高経営責任者)は、基調講演で聴衆にこう呼びかけた(写真)。

 同社が進める戦略は、自社を中心にしたクラウド事業者同士の連合を結成すること()。アマゾン・ドット・コム、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手フェースブックとの提携を発表した。今年4月にはグーグルとの提携を発表済みだ。セールスフォ ースのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)開発・運用支援サービス「Force.com」と他のサービスを連携させて、相互に機能を呼び出せるようにする。

図●セールスフォースは自社サービスを基盤にクラウド事業者同士の連携を進める
図●セールスフォースは自社サービスを基盤にクラウド事業者同士の連携を進める

 アマゾンは仮想マシンサービス「EC2」などを提供する、小売業の枠を超えた大手“ITベンダー”。フェースブックは利用者数1億2000万人に達し、今や米国のビジネスパーソンの必須ツールだ。商談の相手探しや人材採用の場として日常的に使われている。アマゾンやグーグルのIT基盤だけでなく、有力な「ビジネスの場」までも取り込むことで、“エンタープライズ・クラウド”の基盤としての地位を確固たるものにする――。これがセールスフォ ースの狙いである。

 セールスフォースはForce.comと各社のサービスを組み合わせたSaaSを開発するツールを無償公開。基調講演ではForce.com上の顧客管理システムとアマゾンのストレージサービス「S3」を連携させ、名刺画像データをS3に保存するデモを披露した。

 フェースブックについては、Force.comで開発した人材採用アプリケーションをフェースブックに公開して応募を受け付ける、といった連携が容易になるという。

 「当社はすべての他者を愛する」。こう語るベニオフCEOは、自社連合のさらなる拡大に意欲を示す。ちょうど1週間前に発表されたマイクロソフトのWindows Azureについては、「単なる仮想化。まだ登場してもいない技術で、取るに足らない」と切って捨てた。