PCの信頼性をハードウエアで支える「インテル vPro プロセッサー・テクノロジー(vPro)」が持つ三大機能のうち、障害が発生したクライアントPCを診断し、修復を指す「ヒール」機能について解説する。ヒールにより、IPネットワークを通じ外部の端末から、故障したPCを操作できる。さらにHDD以外のストレージ機器から、OSやアプリケーションを当該PCに再インストールできる。


 前回までに説明したように、「インテル アクティブ・マネジメント・テクノロジー(AMT)」によって実現されるクライアント管理機能は、「ディスカバー(discover)」、「ヒール(heal)」、「プロテクト(protect)」の3つに分類される。このうち、社内のクライアントPCを確実に検出し、その詳細なシステム構成を取得するディスカバーの仕組みを前回取り上げた。今回は2番目の『ヒール』について解説していく。ヒールは障害が発生したクライアントPCを診断し、修復を目指す機能である。

従来のサポート形態はコスト増と生産性の低下を招く

 多くの企業においては、クライアントPCに障害が発生した場合、そのPCを使っていた社員は社内のヘルプデスクにすぐ連絡し、クライアントPCの修復を依頼する。主要なクライアント管理ソフトウエアがPCに導入されていれば、依頼を受けたIT管理者は、自分のクライアントPCからリモート操作によって当該クライアントPCの診断や修復を試みる。

 しかし、前回までの説明からも分かるように、既存のクライアント管理ソフトウエアは、当該クライアントPCの電源がOFFだったり、何らかのトラブルでOSを起動できない場合、リモートからそのPCをまったく操作できない。こうした管理ソフトウエアは、OS上で送受信されるネットワークトラフィックとまったく同じ経路(インバンド方式)を通じて、クライアントPCの管理情報をやり取りするからだ。

 電源がOFFだったり、OSを起動できない場合は結局、IT管理者あるいはヘルプデスク担当のサポート人員が、修復対象となるクライアントPCの設置場所まで出向き、障害原因を診断し、解決を図ることになる。このようなサポート形態は、一般にオンサイト形式と呼ばれる。

 オンサイト形式のサポートは、IT管理者が物理的に移動することから、非常にコストがかかる。修復開始から終了までの間、IT管理者はクライアントPCの前で完全に拘束されてしまうからだ。修復が完了するまで社員も仕事を進められなくなり、業務の生産性も落ちてしまう。

 修復対象となるクライアントPCが遠方の支社などに置かれている場合には、さらにやっかいだ。まず、IT管理者を支社に出張させるために、高額の交通費と人件費が必要になる。管理者の到着を待つため、修復完了までの時間が余計にかかり、社員の業務の生産性はさらに低下する。

 かなり遠方の支社の場合、IT管理者の交通費や人件費を浮かすために出張をさせず、クライアントPCを本社のIT管理部門まで送付することもある。しかし、送付と返送にそれぞれ1日を要したとすると修復に要する期間は最低でも丸2日は延びることになり、社員の業務に多大な影響を与えてしまう。

 このように、オンサイト形式やPCを送付してもらう、といった従来のサポート形態は、ITサポート関連コストの増大と社員の生産性低下といった数々の問題を招いてしまう。企業経営から見て、無視できない損失と言える。