NTT東日本/西日本のフレッツ光シリーズの販売状況に,マンション市場での新規獲得の伸び悩みが影を落としている。ADSLからの移行需要が一巡したことに加え,NGNを使うフレッツ光ネクストを投入したことで,新規契約が取りにくくなる誤算があった。下半期は光配線の導入工事の簡便化により,巻き返しを図る。

 NGNを活用した「フレッツ光ネクスト」の提供エリアが広がる中,NTT東西がマンション向けのFTTHサービスで新規加入者を思うように獲得できなくなっている。Bフレッツ用光回線を導入済みのマンションで,新規加入希望者にNGN対応の光ネクストを提供できないケースが生じているのだ。光ネクストの提供エリアでは,Bフレッツの新規加入は受け付けない前提だったが,純増数を確保するためにはマンションなどで,Bフレッツを併売せざるを得ない状況になっている。

 フレッツ光シリーズの販売ペースは,純増実績が上半期で前年同期を割り込むなど勢いに陰りが見えている。この2年半の間,ほぼ維持してきた月間20万件強の純増ペースを継続するだけでは,グループ目標である2010年度末時点の累計2000万件に届かないことが見えてきた(図1)。2000万の実現には東西合計で月間30万件を超すペースに引き上げなくてはならない。

図1●フレッツ光シリーズの累計加入者数の推移と予測<br>2008年9月末までの実績値から2010年度末時点の累計加入者を予測すると,現状の純増ペースでは1650万件にとどまる。
図1●フレッツ光シリーズの累計加入者数の推移と予測
2008年9月末までの実績値から2010年度末時点の累計加入者を予測すると,現状の純増ペースでは1650万件にとどまる。
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導入済み集合住宅にも別設備が必要

写真1●フレッツ光販売促進の様子
写真1●フレッツ光販売促進の様子

 その最善策は,マンション市場での新規獲得を取りこぼさないこと。大都市圏では居住世帯の過半数はマンションが占めている。「設備さえ導入できれば効率的に加入者獲得の営業が可能になる」(NTT西日本の前田紀生・マーケティング部IPサービス部門IPアクセス担当部長)点からも,マンション向け販売の動向がFTTH普及ペースの鍵を握る(写真1)。

 NTT東西は,これまで基本的に光ネクストを,Bフレッツに置き換わる“後継サービス”として売り出してきた。現状,両サービスの性能や価格に大差ないのは,そのためだ。順次拡大している光ネクストの提供エリアでは,原則Bフレッツの新規販売はやめ,代わりに光ネクストを提供するとしてきた。

 ところが,この原則が上半期のマンションの新規獲得を鈍らせることになった。Bフレッツ導入済みマンションで新規加入世帯を獲得するためには,既存回線とは別に光ネクスト用の回線を引き込み,専用の分配装置を設置しなければならないからだ(図2)。

図2●マンション向けでは光ネクスト用設備の追加導入が課題に<br>Bフレッツを既に導入済みのマンションでも光ネクストに加入するには新たな設備導入が必要。当面はNGN対応エリアでもやむを得ずBフレッツを併売する。今後は光導入工事のハードルを低くして光配線方式での加入を促進する方針。
図2●マンション向けでは光ネクスト用設備の追加導入が課題に
Bフレッツを既に導入済みのマンションでも光ネクストに加入するには新たな設備導入が必要。当面はNGN対応エリアでもやむを得ずBフレッツを併売する。今後は光導入工事のハードルを低くして光配線方式での加入を促進する方針。
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 このため,「光回線導入済みマンションを光ネクストに対応させるための設備設置交渉などに労力が割かれ,販売まで手が回らない面があった」(NTT東日本の日森敏泰・コンシューマ事業推進本部・営業推進部IPアクセスサービス部門長)という。結果として第2四半期の純増数が前年同期比で15%以上も下回る一因となった。