SBI証券の岩吉直樹取締役執行役員システム部長

 SBIホールディングス傘下のオンライン証券会社であるSBI証券(東京・港区)。2006年までは社名がイー・トレード証券だったが、2006年と2008年の2度の名称変更を経て、現在に至る。SBI証券の岩吉直樹取締役執行役員システム部長は、イー・トレード証券時代から、システム企画・開発・運用の責任者を務めてきた。

 一般の証券会社とオンライン専業証券会社とでは、顧客からの注文を処理するための業務やシステムにおいて、最適な業務フローや在り方が異なる。そこで岩吉取締役執行役員は最適な業務フローとシステムを1から設計した。その過程で「その業務は何のためにやっているのか」「今のやり方は正しいのか」を検証する姿勢を身に付け、「現状を正しいとは思いこまないようにすべき」との持論を得たという。

 この持論に基づいて、IT(情報技術)部門の部下に対しては「業務に取りかかる際に、なぜこの業務をやっているのかを必ず2~3回は掘り下げて考えてくれ」と呼びかけている。現在の業務の進め方が本当に最適かを問い直す姿勢を部下たちが身につけることを期待している。業務の狙いを理解できた部下は、業務を遂行した後に求められる次の課題にも、すぐ取りかかれるようになるという。

 また、「自分の業務が顧客や会社にいかに役立つか」について、仮説とその裏付けを考えさせている。正しく仮説を立てて成果を上げられれば、部下が大きなやりがいを感じられるからだ。「ほかの部門の人材とのコミュニケーションを増やす目的にも役立つ」(岩吉取締役執行役員)と考えている。

 IT部門の人材は、技術を突き詰める業務にやりがいを感じる一方、「自分の業務内容は、ほかの部門には分かるまい」と思い込み、ほかの部門とのコミュニケーションに消極的になりがちという。これを防ぐには、いかに自分の業務が役立つかを常に考えさせておくことが有効というわけだ。

Profile of CIO

◆ITベンダーに対し強く要望したいこと、IT業界への不満など
・発注者とITベンダーといった具合に両者を切り分けて考えるのが好きではありません。そこで当社の担当者になったITベンダーの方とは、同じ目線で話ができる関係を構築したいと望んでいます

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・日経コンピュータ
・致知

◆最近読んだお薦めの本
・『12歳からの人づくり-「論語」で伸ばす学力と徳力』(高橋鍵彌、致知出版社)

子供の教育の目的で購入しましたが、想像以上に深い内容でした。

◆ストレス解消法
・業務上の問題を掘り下げて考えるうちに、ストレスにつながるマイナスの発想が浮かんできた場合には、いったん考えるのをやめます。並行している別の業務を進めたり、抱えている問題とは関係のない相手と話したりして、気分を転換しています