谷沢製作所がNECらと共同開発した「Uメット」の外観
谷沢製作所がNECらと共同開発した「Uメット」の外観
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Uメットの装着例。NECの展示会に参考出品されたもの
Uメットの装着例。NECの展示会に参考出品されたもの
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頼りない小学生がマスクを被ると正義の味方に変身する漫画「パーマン」を知っていますか?パーマンのように体力が6600倍になるわけではないが、過酷な環境下での活動を支援できるヘルメットが近く商品化される。ヘルメット・メーカーの谷沢製作所が、NECおよびNECエンジニアリングと共同開発した「Uメット」だ。Uメットを被れば、未経験者であっても即戦力になれる。

 正義の味方になろうとは思わなくても、「もう少し能力があれば、できるのに」と感じることは誰しもあるだろう。そんな希望を、範囲は限られてくれるとはいえ、叶えてくれそうなのが「Uメット」だ(写真1)。産業用ヘルメット・メーカーで高いシェアを持つ谷沢製作所が、NECおよびNECエンジニアリングと共同開発した。

 このUメットが、我々の能力を補ってくれるのは、“目、耳、口”の三つの感覚と、種々の作業に必要な経験・ノウハウだ。感覚は、ヘルメットに組み込んだ小型カメラや防雑音型ヘッドセットが補う。経験・ノウハウは、さすがにヘルメット単体では補えない。通信機能を使って、本部や事務所にいるベテランと画像や音を共有しながら対話することで、彼らの知恵を“借用”する。技術的には、電子マニュアルを携行し、ヘッドマウント・ディスプレイを使って現場で参照することはできる。

 「なんだ、単なるカメラや通信機能が付いただけではないか」という声が聞こえそうだ。事実、Uメットは、小型カメラや、3G(第3世代)携帯電話や無線LAN、GPS(全地球測位システム)あるいは赤外線を使った位置検出、倒れ検知といった機能と、ヘッドセットやメモリーやバッテリーを組み込んだヘルメットである。個々の機能は一般に提供されているから、携帯電話やトランシーバなどを携帯したり、小型カメラをケーブル接続して画像を送ったりすることは可能だろう。

超小型サーバーがハンズフリー、ITフリーを実現

しかし、Uメットの優れどころは、カメラや携帯電話の操作を、ヘルメット装着者が意識する必要がないことである(写真2)。ヘルメットを被るだけで、感覚や経験・ノウハウを補ってもらえるわけだから、まさに正義の味方が「今、いくぞ!」といった気持ちになれませんか?ヘルメットを被ること自体、「出動」という感覚はあるのだろうけれど、ヘルメットを被ってから、「トランシーバ、よし。携帯電話、よし。カメラ、よし。接続、よし。・・・・」と確認していては、気持ちが萎えてしまいかねないのではないか。

 ヘルメット装着者に、ITフリー、すなわち両手を自由に使える“ハンズフリー”の状態を提供するのは、NECエンジニアリングが開発する超小型サーバー「VIシリーズ」である。大きさは、幅76ミリ×高さ95ミリ×奥行き26ミリ程度、重さは約130gで、同社によれば「世界最軽量」という。カメラ・通信機能付きヘルメットがクライアントとなり、本部などに置くサーバーとやり取りすれば、映像やノウハウの共有は可能なように思う。なのに、なぜ装着者側にもサーバーが必要なのだろう。

 Uメットと同等の機能は、既存製品の組み合わせでも実現できる。しかし、単なる組み合わせでは、トランシーバや携帯電話のキーや、カメラの電源スイッチなどを、本部などとやり取りする度に操作する必要がある。手袋を着けた現場の担当者にすれば、操作しづらいし、作業の中断は集中力の低下にもつながる。Uメットも、これをクライアントに位置付けると、各機能を利用するための操作が必要になる。操作回数を減らすために、例えば各機能の電源を常にオンすると、今度は「小型バッテリーしか持てないため、十分な作業時間を確保できない」(NECの佐々木豊 企業ソリューション企画本部シニアマネージャー)ことになる。

 そこで登場するのが、超小型サーバーだ。このサーバーが本部のリクエストを受けて、カメラ映像を取得・送信したり、各種センサーの電源を投入したりする。このときサーバー上では、Uメットが持つ各機能に対応したサービス・アプリケーションが稼働している。そして、本部側のサーバーでは、実は超小型サーバーにリクエストを出すためのクライアント・ソフトが稼働しているのである。本部側にいる管理者やベテランは、このクライアント・ソフトが取得した情報を受け取った管理サーバーの内容を、ブラウザなどを使って見ることになる。