ITR シニア・アナリスト
生熊 清司

 「グリーンIT簡易診断ツール」のオープンに先駆け,2008年9月9日~26日までの期間にITpro Researchモニターを対象に事前調査を実施し,1006件の有効回答数を得た。今回はどの調査結果について報告する。回答者のプロフィールは図4の通りである。

図4●回答者プロフィール
図4●回答者プロフィール──従業員数
図4●回答者プロフィール──売上高
図4●回答者プロフィール──業種
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 この調査では,グリーンIT度を評価する5つの視点ごとに,それぞれ満点回答の場合には10ポイントのスコアが得られるように作られている。

 まず有効回答者全体の平均点を見ると,5つの視点のなかで,「運営とプロセス」が最も高く,5.17ポイントとなった。次いで,「実施度」(3.97),「コミットメント」(3.96),「コストと効果」(3.88)と僅差で続く。これらに比べると「運営体制」が3.23ポイントと,若干低い結果となった(図5)。どの視点も平均点が5ポイント以下であり,総じてグリーンITの推進は,現時点では十分浸透していないと思われる。

図5●全体平均のチャート
図5●全体平均のチャート

 回答者のスコアを,従業員規模別(図6)と売上金額別(図7)に見てみると,企業規模が大きいほどグリーンITがよく推進されている傾向にあることがわかる。一般に,大企業の方が中小・中堅企業よりも,CSR活動や環境対策を積極的に行っている傾向があるが,今回の調査結果から,グリーンITが環境対策の一環として位置付けられていることが伺える。

図6●従業員規模別のチャート
図6●従業員規模別のチャート
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図7●売上規模別のチャート
図7●売上規模別のチャート
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図8●業種別のチャート
図8●業種別のチャート
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 次に業種別に見ると,製造業が全ての視点において,他の業種よりも高いポイントになっている(図8)。コミットメントの視点では金融・保険が最も低くなっているが,その他の4つの視点では全て建設業が最も低い結果となった。

 製造業はこれまでも省エネルギーや環境汚染物質対策などに積極的な業種であることから,グリーンITに対しても積極的であることは十分に予測できる。これに対し,建設業のポイントが低いのは少々意外に感じた。なぜなら,最近はビルや地域開発などでも省エネルギーや環境に対する配慮が求められており,建設業での環境対策の意識はかなり高まっていると考えたためである。

 次回からいよいよ活用・実践編に入る。グリーンIT診断ツールの評価結果(スコア・チャート)の典型的な5つのパターンを示し,それぞれに当てはまる企業の特徴と改善点,対策例を説明する。

生熊 清司(いくま せいじ)
ITR シニア・アナリスト
DBMS,SOAを含むITインフラストラクチャー製品を担当。外資系コンピュータメーカー,コグノス日本法人,日本オラクルなどでのSEやマーケティング関連業務を担当した後,2006年から現職。

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