こうした中で,iPhone 3Gに続けとばかりに新しいスマートフォンが日本市場に次々と上陸している。タッチパネルを搭載した台湾HTCのWindows Mobile機「Touch Diamond」をイー・モバイルが10月に発売。NTTドコモ,KDDI,ソフトバンクモバイルも2008年末から2009年にかけて同シリーズをベースにした製品を投入する。2009年以降はNTTドコモ,KDDIが米グーグルのAndroidを搭載する端末の投入を視野に入れる(図1)。

図1●新世代スマートフォンは海外メーカーが主軸に<br>米マイクロソフトのWindows Mobile機のほか,カナダのリサーチ・イン・モーションのBlackBerry,米アップルのiPhoneと海外メーカーの製品が占める。
図1●新世代スマートフォンは海外メーカーが主軸に
米マイクロソフトのWindows Mobile機のほか,カナダのリサーチ・イン・モーションのBlackBerry,米アップルのiPhoneと海外メーカーの製品が占める。
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 韓国サムスン電子は日本にWindows Mobile機「OMNIA」を2008年内に投入予定。日本市場にはウィルコムの「WILLCOM 03」といった先駆的な端末も存在する。今後は世界市場育ちの「新世代スマートフォン」とともに,新たな市場をうかがうことなる。

 新世代スマートフォンは,次の三つがこれまでのスマートフォンとは大きく異なる。(1)技術の進歩で実現された新しい操作感,(2)アプリ配信などサービスを一体化したネット利用の促進,(3)グローバル/オープン化──である。

2008年に技術的な成熟を迎えて新世代へ

 (1)については,ソフトバンクモバイルの孫正義代表取締役社長が法人向けユーザーに向けたイベントで次のように述べている。「通信速度,液晶の解像度,CPUの能力の3点が技術的に成熟する時期が,2008年だった。iPhoneのような“インターネット・マシン”が登場するのは必然だった」。3Gやメガ・ビット/秒の伝送速度を期待できるHSDPA(high speed downlink packet access)が登場。これに液晶ディスプレイの大型化・高解像度化やCPUの処理性能も向上が加わり,これまでのスマートフォンにはない滑らかな動画再生や動きのあるユーザー・インタフェースを実現できた。

 (2)は,インターネット経由でアプリケーションやコンテンツをユーザーの好みで取り込める環境を一体化した点が新しい。単にWebブラウザでコンテンツにアクセスすることからもう一段発展させたもので,代表例が米アップルのApp Storeである。他社もこれに追随する動きを見せている。

 (3)のグローバル/オープン化は,アプリケーションの開発者,そして端末メーカーの双方のメリットになる。世界中のソフトウエア開発者が開発キットを入手して,新世代スマートフォン向けのアプリ開発に参入。しかもそれを世界中に配信できる。一方,世界中で使えるオープンな開発プラットフォームは,端末メーカーの開発コストを削減することにもつながる。

個人への広がりを強く意識

 ただ,多くの新世代端末が登場するとはいえ,これまでのスマートフォンの国内市場は低迷していた。Black Berryの発表会でNTTドコモが示した資料によると,携帯電話販売の中で,スマートフォンの占める割合は北米が17%であるのに対し日本は2%に過ぎない(図2,図3)。

図2●日本にはスマートフォン普及の土壌がほとんどなかった<br>海外に比べて,日本のスマートフォンの普及率は低い。海外と比べてExchangeのシェアが低い,通常の携帯電話でもアプリを実行できるといった違いがある。
図2●日本にはスマートフォン普及の土壌がほとんどなかった
海外に比べて,日本のスマートフォンの普及率は低い。海外と比べてExchangeのシェアが低い,通常の携帯電話でもアプリを実行できるといった違いがある。
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図3●国内におけるスマートフォンの出荷台数分析と予測
図3●国内におけるスマートフォンの出荷台数分析と予測
調査会社のROA Group調べ。2007年以降の数値は予測値。