前回は,会議で参加者が納得感を持つことの大切さや納得感を持ちやすい会議の特徴などを説明しました。納得感を持てる会議であれば,参加者は積極的に会議に参加したくなります。

 前回述べたとおり,参加者全員の納得感を得るためには,ファシリテーションの考え方が有効です。そこで今回は,ファシリテーションの考え方をベースに,会議の「事前準備」と「進行」で気をつけるべきポイントを詳しく解説しましょう。

ファシリテータは「議論の内容」には関与しない

 納得感のある会議を実現するために有効なファシリテーションとは何か,もう一度簡単におさらいをしておきましょう。

 前回にも書いたとおり,ファシリテーション(facilitation)とは,

    人々の協働を促進したり,手助けしたりすること,
    あるいはそのための手法

のことです。そして,会議でファシリテーションを実施する人のことを「ファシリテータ」と呼びます。ファシリテータは,目標を明確にしたり,発言しやすい雰囲気を作ったり,目標からそれた時は軌道修正したりして,参加者の協働を促進します。

 ファシリテータは,議論の内容そのものには関与しません。あくまでも,会議の事前準備や進行といった「プロセス」に介入することで,会議の活性化などを促進・手助けするのが基本的な考え方です。

 リーダーやマネジャーがメンバーを集めて,ファシリテータとして会議を進行するときは,特に注意が必要です。決定権を持つ人が議論の内容に関与しすぎると,参加者は「何を言っても,結局最後は上の人の意見に決まるんだな」と感じてしまい,ただ聞いているだけになってしまうからです。これでは,参加者は納得感を持てません。ファシリテータはあくまでも会議のプロセスに注目して,全員の意見を引き出したり,参加しやすい雰囲気を作ったり,会議の目的に向かって全員が知恵を出せるよう働きかけたりする必要があります。

事前準備のコツ
「とりあえず集まって話そう」では納得感は得られない

 ここからは,会議の事前準備と進行について,気をつけるべきポイントを具体的に解説していきましょう。まずは,事前準備からです。

 参加者の積極的な参加を促し,納得感のある会議にするために,事前準備は非常に大切です。準備もなしに「とりあえず会議で集まって話そう」「定例会議なので特に準備はいらないだろう」---。これでは会議をファシリテートすることは難しくなります。

 例えば,登山チームのメンバーが集まったとしても,登るべき頂や辿るべきルートが不明確,各人のやるべきことが分からない,必要な機材が足りない---という状況では,右往左往するだけで,なにもできません。会議でも,なんの準備もなしに,それぞれがバラバラの想いで行動しても,納得感のある会議とは程遠い結果になってしまいます。このため,登山で言えばどの頂を目指すのか(会議のゴール,成果物),どういうルートで上るのか(会議の流れや目次,方法),各人のやるべきこと(参加者の人選と役割),必要な機材(資料や会議室,プロジェクタの有無など)を事前に明確にして,全員が協働できる環境を準備しておくことが非常に大切です。

 事前準備は,おおまかに以下の手順に分けることができます(図1)。

図1●事前準備の流れ
図1●事前準備の流れ