情報システムにおける“うっかりミス”問題に関する雑誌やWebの報道が読者の関心を集めている。うっかりミスとは何か、なぜこの問題が注目されたのか。「情報システムのうっかりミス特命記者」の大和田尚孝(日経コンピュータ編集部)に、編集委員の谷島宣之が尋ねた。

谷島編集委員(以下Y) 情報システムの“うっかりミス”に関する一連の報道が反響を呼び、このテーマに関する“特命記者”を名乗ったとか。なぜ、この問題に注目したのかな。

大和田記者(以下O) 日経コンピュータで情報システムのトラブルに関する記事を何度か手がけてきました。2008年になって個別に記事を書くのではなく、システムのトラブル原因を体系立ててまとめる機会を頂いたので、トラブル原因を自分なりに整理してみたのです。その結果、ハードウエア故障やソフトウエアのバグのほかに、いわゆるヒューマンエラーと称される原因があると、おそまきながら気付きました。ソフトウエアのバグをヒューマンエラーに入れることもできますが、ここで言っているのは、オペレーションミスやシステム移行期のパラメータ設定ミスといった、単純な間違いです。単純なだけに、なぜ間違えたか説明できない。こうしたミスが案外多いのではないかと思ったわけです。

Y 日経コンピュータに特集記事を書いただけではなく、色々な場所で活動していたね。

O 日経コンピュータの特集をまとめた直後、ITproで読者の方々に意見を求めるコラム「うっかりミスは叱っても減らない」を執筆しました。日経コンピュータ7月15日号に掲載した特集記事『うっかりミスは無くせる』はそのまま、ITproでも公開しています(「トラブル原因の半分がうっかり」)。特集記事、ITpro上の記事の両方とも、多くの読者に読んで頂きました。有難いことに「参考になった」というご評価も多数の方から賜りました。

 好評だったので、特集記事の取材に応じて下さったヒューマンエラーの専門家やこの問題に取り組んでいる企業幹部の方に登壇頂くセミナーを11月に開催しました。こちらも大変関心を集め、講演会場を予定より大きな場所に変更して実施したのですが、すぐ満席になってしまい、一部の方の受講をお断りしてしまいました。申し訳なく思っております。

Y 大うけだったわけだ。

O 大うけ、という表現はちょっと…、一連の企画をした当人として反響があったことは嬉しいですが、テーマがテーマですので「良かった」と手放しで喜ぶわけにはいきません。引き続き、こうしたテーマについて取材や報道を重ね、トラブルの減少に少しでもお役に立てればと思っています。それから「特命記者」はセミナー担当者が付けたものでして、自ら名乗ったわけではございません。