「100円」の小型ノート・パソコン(PC)が家電量販店をにぎわせている。例えばコジマは,7月から小型ノートPCとデータ通信カードを100円でセット販売している。新規でイー・モバイルの料金プラン「スーパーライトデータプランにねんMAX」(にねんMAX)に同時加入することが条件だ。にねんMAXは2年間の継続が前提の2段階定額制で,月額2900円~6880円である。

 端末価格(イー・モバイルは初期費用と呼ぶ)は次の計算で決まる。データ通信カードが3万3980円,ノートPCが4万4800円の場合,これに,にねんMAXの月額最低料金と同額の2900円×2年分=6万9600円の割り引きが適用される。7万8780円(カードとPCの合計)から6万9600円を引くと9180円。ここからさらに9080円を割り引いて100円になる。

 にねんMAXはイー・モバイルの他のデータ料金プランに比べ,月額料金が割高である。同社から見ると割り引き原資を2年かけて通信料から回収するような仕組みで,ユーザーから見ると端末代を2年間分割で支払うようなイメージとなる。ただユーザーの評判は上々で,同社はこの施策でデータ通信の契約数を約3割上乗せできたという。

 この結果,小型ノートPCの新市場が開拓されれば,PCメーカーとしても歓迎したいところだが,あるメーカー幹部の表情はさえない。「既存PCの買い替えユーザーが意外に多い」と見ているからだ。新規の追加購入ではないとすると,単にノートPCの低価格化が進んだだけ。メーカーは事業者から割り引き前の代金を受け取れるとはいえ,市場が広がるわけではなく,ユーザーの支出も減る。“1円”という価格で市場を成長させたかつての携帯電話販売とはどうも事情が異なるようだ。