これまでスマートフォンを市場に投入していない唯一の携帯電話事業者だったKDDIが,ついに2009年春に台湾HTC製のスマートフォン「E30HT」を発売することを明らかにした。

 満を持しての発表だったが,その直後にメーカーであるHTCが同様の機種をNTTドコモとソフトバンクモバイル向けにも提供することを発表。せっかくの“KDDI初”という触れ込みが,瞬く間に陳腐化してしまった。これにはKDDI社内からも,「待望のスマートフォンだったのに,もう少しうまい見せ方をしたかった」というため息が聞こえてくる。

 実はこの話には裏がある。今回KDDIが発表したE30HTは,企業向けの端末。それとは別に同社は,コンシューマ向けスマートフォンの開発も進めてきたからだ。「既にモックアップができあがっており,これまでにない端末の形になっている」とKDDIのある幹部は自信あり気だ。

 KDDI社内では,この“本命”とも言えるコンシューマ向けスマートフォンと,今回発表になった企業向けのスマートフォンのどちらを先に発表するか議論になっていたようだ。しかしコンシューマ向けは開発に苦戦中。ある関係者は「年内発売はまず無理。発表もまだまだ先になるのでは」と語る。結果的に,企業向けスマートフォンが先に世に出たわけだ。

 スマートフォン市場を巡っては,NTTドコモが2008年9月29日に開催した新型BlackBerryの発表会で,同社の山田隆持社長が2009年に10機種ものスマートフォンを市場投入する方針を明言。KDDIも,“本命”のコンシューマ向けスマートフォンを,少しでも早く投入したいと思っているところだろう。