セブン&アイ・ホールディングスは、増え続けるITコストを削減するため、グループ全体のシステムを刷新した。ハードウエアやネットワークといったシステム基盤と、財務・総務・人事などの管理系システムを完全に統合。業務系システムについても、スーパーやレストランといった業態ごとに業務をそろえることで、共通アプリケーションを作成した。今後5年間で300億円のITコスト削減を実現する。

 500億円かけて構築したセブン-イレブン・ジャパンの第6次システム、アイワイ・カード・サービスが発行する電子マネー「nanaco」、全国で1万3000台を超えるセブン銀行のATM(現金自動預け払い機)など例を挙げればキリがない。セブン&アイ・ホールディングスはITをビジネスに有効活用している日本でも有数の企業である。

セブン&アイ・ホールディングスは傘下のスーパー、レストラン、コンビニエンス・ストアなどのシステム基盤や管理系システムを統合した
セブン&アイ・ホールディングスは傘下のスーパー、レストラン、コンビニエンス・ストアなどのシステム基盤や管理系システムを統合した

 だが、そんな同社も「ITコストの肥大化」という悩みを抱えていた。積極的なIT活用に加えて、店舗や事業、グループ企業の拡大が重なり、ITコストが年々増加していたのだ。

 セブン&アイの鈴木敏文代表取締役会長CEO(最高経営責任者)は「小売業の原点は1人で仕入れて1人で売るというスタイル。基本的にはITはいらない」という考えの持ち主だ。そのため、「売る物や店の数、グループ企業が増えるに従ってITコストが増えるのはおかしい」と、ITコストの削減に乗り出す。2003年11月、グループのシステム共通化プロジェクトを発足し、鈴木CEOが自らリーダーに就いた。

 ITコストが肥大化した原因は、スーパーやレストラン、コンビニエンス・ストアなどの事業会社がそれぞれ個別最適のシステムを構築していたことにある。各事業会社は別個にシステムを持っており、ハードウエアなどもそれぞれがベストだと思うものをその時々で選んでいた。

 プロジェクトの内容は、グループ全体でハードウエアやネットワークといったシステム基盤と、財務・総務・人事などの管理系システムを完全に統合し、業務系システムについてはスーパーやレストランといった各業態ごとに共通化するというもの(図1)。年間で3割、5年で300億円のITコスト削減を目標に掲げた。

図1●セブン&アイが構築したグループ統合システムの概要
図1●セブン&アイが構築したグループ統合システムの概要
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 今回のプロジェクトは「最新のITを取り入れて、全く新しいビジネスを展開する」といった華やかなものではない。さまざまな工夫を積み重ねてITコストを目標値まで削減するという非常に地道なプロジェクトだ。「店舗システム環境共通化」「ネットワーク統合」など25のプロジェクト・チームを立ち上げ、NECや野村総合研究所(NRI)など複数のベンダーと協力し、目標達成に邁進した(図2)。

図2●鈴木CEOをリーダーに、25のプロジェクト・チームで統合を進めた
図2●鈴木CEOをリーダーに、25のプロジェクト・チームで統合を進めた
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