米Microsoftは,数え切れないほど多くの企業と提携を結んでいる。そして,IT業界の巨人となったMicrosoftが,ほかの会社と結んだそれらの提携が自分に悪影響を与えないのか,人々は過敏なほどに気にするものだ。最近話題となっている「Vista Capable」集団訴訟も,そうした問題の一つといってよいだろう。だが,こうして話題となった問題の大半は杞憂に過ぎないであることが多い。2年前に話題を集めたNovellとの提携を思い出してほしい。

Take1:Microsoftが「Vista Capable」集団訴訟の棄却を要求

 Microsoftは2008年11月20日(米国時間),ワシントン州シアトルの米連邦裁判所に対し,「Vista Capable」認定ロゴ・プログラムに関する集団訴訟の未決案件を棄却するよう求めた。集団訴訟の原告によると,Microsoftは同プログラムで「Windows Vista」を使うのに必要最低限の機能しか備えておらず,Windows Vistaの特徴的な機能を利用できないことの多いパソコンに対し,「Vista Capable」(Vistaを実行する能力がある)と説明して顧客を欺いたという。

 この訴訟で,Microsoftはばつの悪い社内メールを大量に公開してきた。同社はマイクロプロセッサ大手の米Intelに譲歩するため同プログラムの認定条件を下げ,幹部とパートナ企業の反発を招いたのだ。Microsoftによると,こうしたメールは注目を集めてしまうが,公開した本来の目的は「関係者が製品開発の過程で活発に議論していた」という事実を示すことであり,訴訟自体との関係は薄いという(関連記事:PC業界における景気後退の一因はWindows 7?)。

 今回の棄却要求を判事が認めなければ,公判は2009年4月に開かれる。

Take2:MicrosoftとNovellが提携した2年間で何が変わったのか?

 2年前の2006年11月,当時としては絶対あり得ないはずのことが起きた。Microsoftと米Novellが技術業界で史上最も物議を醸した業務提携の一つを実現させたのだ。この提携により,Microsoftは数百億ドル分の「Novell SUSE Linux」を購入し,NovellはMicrosoftと特許ライセンス契約を結ぶことになった(関連記事:MicrosoftとNovell提携,仮想化とオフィス文書でLinuxとWindowsの相互運用性拡大,特許も相互開放)。

 この衝撃を与えた契約締結から2年が過ぎ,IT業界の状況は何か変わっただろうか。太陽は相変わらず毎日きちんと上り,地球はイナゴの大群に襲われず無事残っている。オープンソース専門家/支援者の恐怖も明らかに根拠がなかった。そして,MicrosoftとNovellによる相互接続性の推進を大歓迎する企業顧客も多いようだ。

 つまり,Novellにとってオープンソース・コミュニティ代表という役割は薄れたとうことだ。この提携を切っ掛けに登場したちっぽけなWebサイト「Boycott Novell」の運営者であるRoy Schestowitz氏は,「NovellとMicrosoftが自分たちの道を進むなら,Linuxはますますデータセンターの隅に追いやられるようなものだ。実質的に,Linuxは(Windowsで動いているサーバー上の)ゲスト・マシンとして販売されるようになる。仮想化Windowsの有無にかかわらずLinuxサーバーとしては販売されない」と述べている。

 筆者もその通りだと思う。ところで,改めて考えるとLinux派の問題は一体どこにあるのだろうか。