ATM・POS関連機器製造大手の富士通フロンテックは今年8月、営業、受注出荷、生産など八つのSCM(サプライチェーン管理)システムの統合を完了した。人に依存していた従来システムに比べ、納期回答や部品手配を最大14日から1日に短縮するなどリアルタイム化を目指した。理想のシステムを求めてERPパッケージでなく手作りを選択。同時に機能のスリム化を進め、2年弱でのプロジェクト完遂を果たした。

 顧客からの納期に関する問い合わせに対し、24時間以内に回答する。機器の注文を受けてから、製造に必要な部品を手配するまでの期間も24時間以内――富士通フロンテックが今年8月に稼働させた新システム「iTOS(internet Total Operation System)」で狙ったのは“リアルタイムSCM”の実現だ。従来は納期回答、部品手配ともに最大14日を要した(図1)。SCMにかかわる一連の業務をリアルタイム化した企業はまだ少ない。

図1●競合他社との差異化のため、システム統合による業務効率化が不可欠だった
図1●競合他社との差異化のため、システム統合による業務効率化が不可欠だった
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写真●富士通フロンテック情報システム統括部長の南里恒裕氏
写真●富士通フロンテック情報システム統括部長の南里恒裕氏

 「顧客はもちろん、我々情報システム部門や、営業、製造、受発注管理などを担当する業務の各部門、さらに取引先であるサプライヤがハッピーになるための仕組みを実現したかった」。iTOSの開発プロジェクトを主導した南里恒裕 情報システム統括部長はこう振り返る(写真)。

 iTOSは南里統括部長が長年温め続けてきた「理想のSCM」を具現化したものだ。同氏は工場の生産技術に始まり、部品倉庫の管理など、ものづくりの現場に直接かかわってから情報システム部門に来た経験を持つ。この間に「バラバラのシステムを一つにまとめ、人の介入を極力なくす」「取引先を含め全員が同じ情報を共有する」「処理を可能な限りリアルタイム化する」といった次期システム像を頭の中で作り上げてきた。それが花開いたのが今回のプロジェクトだった。

富士通フロンテック製ATM、POS端末と同社新潟第一工場
富士通フロンテック製ATM、POS端末と同社新潟第一工場
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