化粧品専門店「ザ・ボディショップ」を展開するイオンフォレストは今年7月、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型の情報共有ソフトを全国170店舗に導入した。本部から店舗への連絡などに使う。自社開発した同種のソフトを一度も使わずに廃棄し、SaaS型ソフトを採用した。店舗業務の標準化を図るため、自由度の高さよりも使い勝手にこだわった。

 英国発祥の化粧品専門店「ザ・ボディショップ」。天然原料をベースにしたスキンケア製品などを扱う同店の店舗マネジャの1日は、メールのチェックから始まっていた。

 「季節商品を来週から値下げします」「プロモーション用Tシャツの必要枚数とサイズを返信してください」―。こうしたメールが毎月100通以上本部から届いた。スタッフに周知が必要なメールを選んで印刷・掲示したり、セールやプロモーションの予定を店内のカレンダーに書き込むのは店舗マネジャの仕事だが、その負担は重かった。

 情報の掲出やカレンダーへの反映といった作業は、ときに1時間以上かかった。情報をスタッフに伝え損ね、プロモーションの開始が遅れることもあった。

 今年7月、全国170店のマネジャはメールチェックの負担から解放された。ザ・ボディショップを運営するイオンのグループ会社イオンフォレストが、本部と店舗のコミュニケーション用にSaaS型の情報共有ソフトを導入したからだ(図1、図2)。

図1●ザ・ボディショップの店内(左上)と情報共有ソフトの利用風景(左下)<br>売上高や店舗数の急激な伸びを機に情報共有ソフトを導入した
図1●ザ・ボディショップの店内(左上)と情報共有ソフトの利用風景(左下)
売上高や店舗数の急激な伸びを機に情報共有ソフトを導入した
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図2●イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)の運営形態と抱えていた問題
図2●イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)の運営形態と抱えていた問題
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 このソフトは起動すると、スタッフに周知が必要な「お知らせ」と、アクションが必要な「予定している作業」だけを画面に表示する。自ら情報を選別せずに済むので、マネジャの作業量は格段に減る。伝達漏れもなくなる。

 「販売力のある店舗マネジャが接客により多くの時間を割ける」。イオンフォレスト管理本部の新妻貴IT部長は新コミュニケーションツールへの期待を語る。「店舗への指示を定型化でき、業務の標準化にも役立つ」と続ける。

 だが、新コミュニケーションツールの導入は順風満帆とはいかなかった。当初は専用ソフトの自社開発を進めていたが完成直前に利用を中止。2度目の挑戦で全店展開にこぎつけた。