貨物専門航空会社の日本貨物航空(NCA)は4月7日、貨物管理システムを本稼働させた。稼働済みの整備システムや運航管理システムと合わせ、三つの基幹系をわずか2年で開発した。第1号ユーザーも恐れず、海外製のパッケージソフトを全面採用した。最初にシステム部門がシステムの大枠を決め、利用部門の要望は後から取り入れる手法を採用し、スピード開発に成功した。

 「データがサーバーからなかなかダウンロードできません」―。今年4月6日、日曜日の夜。成田国際空港内にある日本貨物航空(NCA)のオフィスに緊張が走った。基幹の貨物管理システム「i-Cargo」の稼働を翌日に控え、オフィスにはIT戦略部や協力パートナーのスタッフが休日返上で詰めていた。

 旧システムからの切り替え作業を始めた矢先にトラブルは起こった。想定していなかったバッチ処理が起動してしまった。過去のデータを保存するサーバーのCPU使用率が予想以上に跳ね上がり、データベースからのデータ出力が遅れた。テストでは1時間程度で終了した作業に6時間もかかった。

 IT戦略部のスタッフは急きょ作業手順を見直した。日付が変わるころには、なんとか移行作業が終わった。翌7日の午前1時には、予定通りi-Cargoのオンラインサービスをスタートできた。

 i-CargoはNCAの業務を支える基幹系システムの一つ。整備システムの「i-Macs」、運航管理システムの「i-Sky」と合わせ“三大システム”と社内では呼んでいる。

 i-Macsやi-Skyも、できたてほやほやのシステム。それぞれ昨年7月1日、今年4月1日に動き出した。i-Cargoの稼働をもって、NCAの2年間にわたる基幹系刷新プロジェクトは終わった。

 データセンターの整備などを含め、約20億円(本誌推定)を投じた。2005年度から3期連続で経常赤字を計上した同社にとっては決して小さくない投資だが、年間に数億円かかっていた社外システムの“賃借”コストをなくし自立するために決断した。

 新システムではデータのリアルタイム分析もできる。迅速な経営判断が可能になるので、収益力の向上に役立つとの期待も大きい(図1、図2)。

図1●日本貨物航空(NCA)はITシステムの自立で業績向上を狙う<br>2005年に日本郵船の連結子会社となったのを機に、業務改善を掲げた「フェニックスプロジェクト」を発表。その一環として、これまで全日本空輸(ANA)に委託していたITシステムの自立を決定。業務の効率化を進め業績の向上を狙う
図1●日本貨物航空(NCA)はITシステムの自立で業績向上を狙う
2005年に日本郵船の連結子会社となったのを機に、業務改善を掲げた「フェニックスプロジェクト」を発表。その一環として、これまで全日本空輸(ANA)に委託していたITシステムの自立を決定。業務の効率化を進め業績の向上を狙う
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図2●日本貨物航空の事業を支える三大システム<br>運航管理システム「i-Sky」、整備システム「i-Macs」、貨物管理システム「i-Cargo」を連携。リアルタイムの情報を互いに活用できる体制を整え、業務の効率化を狙う。2009年4月には管理会計システム「i-Account」を導入し、情報のさらなる活用を予定している
図2●日本貨物航空の事業を支える三大システム
運航管理システム「i-Sky」、整備システム「i-Macs」、貨物管理システム「i-Cargo」を連携。リアルタイムの情報を互いに活用できる体制を整え、業務の効率化を狙う。2009年4月には管理会計システム「i-Account」を導入し、情報のさらなる活用を予定している
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 だが、道のりは平たんではなかった。特にスケジュールが厳しかった。

 2006年初頭にプロジェクトをスタートさせた当初は、3年かけて緩やかに新システムに移行する計画だった。ところが原油価格の高騰に代表される経営環境の悪化を受けて、経営陣は前倒しを決断。三つの基幹系システムをたった2年で立ち上げる強行軍を余儀なくされた。

 しかしIT戦略部のスタッフはあわてなかった。プロジェクトの初期段階でシステムの全体像を固めていたことも奏功。予定通り三大システムを稼働させ、経営層の期待に応えた。