太陽光発電システム
太陽熱ソーラーシステム(貯湯タンクが別置き)
写真●上は太陽光発電システム。下は太陽熱ソーラーシステム(貯湯タンクが別置き)、太陽熱温水器は、貯湯タンクと集熱板が一体のものを指す

 東京都は来年4月から、住宅向け太陽光利用設備の大型助成策を始める。都民から10年間分の環境価値(クレジット)を買い取ってグリーン証書にし、排出量取引に参加する大企業に売却することで、資金を確保する。

 東京都が来年4月に始める住宅向けの太陽光利用設備の助成制度は、都道府県レベルでは破格の規模だ。90億円を拠出する予算の大きさに加えて、補助対象に太陽電池だけでなく太陽熱設備も加えている点が特徴である。

 補助額は太陽光発電システム(太陽電池)が3kWで30万円程度、太陽熱ソーラーシステムが6m2の集熱板で20万円程度、温水器が4m2で3万円程度の見込み。国が復活させる太陽電池への補助制度や市区町村からの補助と併用できる。2009年度と2010年度の2年間実施して、補助額が適切かどうか検証する。目標は2年間で4万世帯への導入だ。

 東京都には、大規模な助成策を立ち上げる理由がある。都独自の排出量取引制度が始まる2010年までに、住宅設置の太陽光利用設備から生まれたグリーン電力証書とグリーン熱証書を流通させる必要があるのだ。

 東京都は2006年12月に、太陽光利用設備を100万kW分導入することと、2025年に2000年比でCO2を25%削減する目標を掲げた。目標の実現のために、2010年をめどに大規模事業所にCO2の排出枠の上限(キャップ)を課し、上限以下に減らした分を取引できる排出量取引制度を導入する。また、中小企業には省エネ、家庭には太陽電池や太陽熱温水器といった太陽光利用設備の導入を促進する方針だ。

 3つの施策を連携させることで、安定的な資金の流れも作り出す。住宅に設置する太陽光利用設備には、都が自家消費分(自宅で利用した分)のクレジットを買い取り、排出量取引制度に参加しキャップを上回った企業に排出枠として売却。中小企業向けの省エネも、削減分をクレジットとして認定し、排出枠として流通させる仕組みを検討中だ。東京都環境政策部の小原昌・環境政策担当課長は、「中小企業と家庭からクレジットを安定的に生み出せば、キャップを課された企業の負担を緩和できる」と狙いを明かす。

図1●東京都の温暖化対策の全体像
図1●東京都の温暖化対策の全体像
中小事業所への省エネ設備の設置や住宅への太陽電池や太陽熱設備の設置を進め、ここから生まれるクレジットを大規模事業者向けの排出量取引制度の中で利用できるようにする計画だ
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