写真●ジュニパーネットワークス ソリューションマーケティング部シニアマネージャーの佐宗大介氏
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 「仮想化技術によってネットワークをシンプルにすることがグリーンITへの近道」──。10月14日に東京・赤坂で開催したグリーンITフォーラムで,ジュニパーネットワークス ソリューションマーケティング部シニアマネージャーの佐宗大介氏が講演し,急増するネットワーク機器の電力消費の現状と重視すべき省電力対策について語った(写真)。

 「米国では電力消費量全体の9.6%をインターネット関連が占めている」。講演の冒頭で佐宗氏は,切り出した。現在はサーバーが問題視されているが,2025年にはネットワーク機器がサーバーの2倍の電力を消費すると予想されており,「ネットワーク機器の省電力対策こそ急がなくてはならない」(同氏)。

 ジュニパーは,インターネット接続事業者(ISP)向けのコア・ネットワーク用高速ルーターを中心に,セキュリティ・アプライアンス,WAN高速化装置,L2/L3スイッチなどを手がけてきた。機器の省電力化にも早くから取り組み,同等の処理能力を持つ他社製品と差別化している。

 「ネットワーク機器による電力消費量とトラフィックとの間には深い関係がある」と佐宗氏は総務省の調査データを基に説明し,ネットワーク機器の省電力性能を評価する指標として,EER(Energy Efficiency Rate)を使用すべきと主張する。EERとは,機器の消費電力1kWあたりのトラフィック量のことで,Mbps/kWやGbps/kWなどの単位で表す。「例えばジュニパーのコア・ルーター「T1600」の場合,EERが87.9Mbps/kWであるのに対し,同等の他社製品は48.5Mbps/kW程度。80%以上効率が高い」と佐宗氏は説明する。バックボーンの末端に配置するエッジ・ルーターでは,ジュニパーの「M120」のEERは27.2Mbps/kW,他社製品は6.3Mbps/kWであり,4倍以上上回っているという。

仮想化技術でネットワークの集積度を向上

 続いて佐宗氏は,ネットワーク機器そのものの省電力化から,ネットワーク・システム全体の省電力化へと話しを進める。従来のネットワークが抱えている課題は,多くの階層において複数のOSや統一性のない技術が使われていること。これらをいかにシンプルにするかが鍵になるという。

 「シンプル化の決め手になるのが仮想化技術。導入メリットは大きく分けて3つある」と佐宗氏は話す。1つめは,アグリゲーション(統合・集約化)。複数の機器を集約し,単体の機器として扱えることだ。ジュニパーのLANスイッチ「EX 4200」はバーチャル・シャーシという機能を備え,仮想的な大型スイッチのように運用できるという。2つめは,パーティショニング。1台の機器を仮想的に分割し,複数の機器のように扱えること。そして3つめは,エミュレーション。MPLSやVPN,論理ルーターなどの伝送技術をアプリケーションによって模倣することである。

 ここで佐宗氏は,同社の省電力機器や仮想化技術などを採用することで,どれくらい運用コストや電力消費量を削減できるかという試算を示した。同社のコア・ルーター「T1600」と他社製品,およびL3スイッチ「MX240」と他社製品の2つのケースについて検討。トラフィック量が年率50%で増加する,1kWhあたりのコストを15円とする,消費電力はカタログ公表値を採用するなどの条件を揃えたうえで,100台の機器を運用したときの10年間の運用コスト(ラック関連費用と電力関連費用の合計)を比較した。この結果,T1600の場合で45%(約300億円),MX240の場合で65%(約40億円)のコスト削減になることがわかったという。

 「今後もネットワーク・インフラの省電力化を推進するソリューションに取り組んでいく」と佐宗氏は最後に意気込みを語り,講演を終えた。