最近なにかと暗い話題の多いPC業界。だが,そんな状況でも話題の中心となっているのは,やはりMicrosoftである。Microsoftの一挙手一投足が業界に与える影響は予想外に大きい。今回は,かげりが見えたPCの売り上げと,Intelへの気遣いが訴訟となっている「Vista Capable」の話をしよう。

Take1:やはり景気後退局面に入ったPC業界

 新型パソコンの購入を考えていて,実際に買える状態にあるのなら,今こそ絶好のチャンスといえる。パソコン・メーカーは突如として消えてしまいそうなホリデー・シーズンを前にして,新型パソコンに約25%の割り引きを適用して売り上げを一気に伸ばす計画なのだ。

パソコン市場の景気はどのくらい悪いのだろうか。2008年第1~第3四半期のパソコン販売は,3四半期連続してそれぞれ前年同期を約12%上回った。だが,クリスマス商戦などのホリデー・シーズンを含む第4四半期について,業界アナリストたちはこれまで公表していた前年同期比6%増という予測から一転。同1%減に下方修正してしまった。

 つい最近経営破綻したパソコン販売チェーンの米Circuit Cityや,悲惨な経済状況に対する懸念を表明した米Best Buyのことを思い出そう(関連記事:Circuit Cityが連邦破産法の適用を申請,事業を継続し再建を目指す)。マイクロプロセッサ大手の米Intelでさえ景気低迷の波に飲み込まれ,売上高が事前予想より「激減する」と警告している。

 もしこの不振の元凶を一つだけ指摘するとしたら,米Microsoftの次期クライアントOS「Windows 7」を名指ししよう。PDC 2008やWinHEC 2008で公表された,この次期OSの出来が予想外によいので,新型パソコンの購入を2009年のWindows 7リリースまで控えているだけ,と筆者は考える。みなさんの意見はどうだろう。

Take:2「Vista Capable」認定プログラム失敗の責任はやはりIntelに

 米Microsoftの「Vista Capable」認定プログラムを詐欺的と主張している集団訴訟において,訴状の内容が2008年11月第2週に明らかになった。それによると,Microsoftは米Intelに譲歩してプログラムの内容を変えたという(関連記事:Microsoft,「『Windows Vista』の広告文は変えていない」と主張)。

 どうやらIntelのCEOであるPaul Otellini氏が,MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏に「Microsoftの定めた最初の内容だと,膨大な数のIntel製チップセットが認定条件を満たせず,これらチップセットを搭載するパソコンにVista Capable認定ロゴのシールを貼り付けられない」と苦情を訴えたらしい。

 MicrosoftはOtellini氏を黙らせるために条件を変更したが,自社幹部の多くからは怒りを買ってしまった。当時MicrosoftでWindows部門のトップを務めていたJim Allchin氏は,そのときに「顧客を誤解させてしまう。混乱を避けなければならない。顧客に対する裏切りだ」と異議を唱えた。このAllchin氏の発言は的を射ているように思える。