経済産業省が「グリーンITアワード2008」を9月25日に発表した。そうそうたる大手ITベンダーが受賞企業に居並ぶ中、1社だけ、“無名”な企業が「審査員特別賞」を受賞した。設立7年のソフトウエアメーカーであるスプライン・ネットワークだ。

 スプライン・ネットワークは、プリンタのトナーの使用量を節約するための機能を備えたソフト「TonerSaver」で評価された。 TonerSaverは、各種ファイルを印刷する際に、専用の設定画面でトナーの使用量を最大50%節約するよう設定できる機能を備えたソフトである。

 スプラインは今年7月、最新版「TonerSaver J2」を出荷。同製品の導入を検討している国内のユーザー企業は、1000社を超えるという。既に従来版のTonerSaverは、約1500社での導入実績がある。パートナー企業の大塚商会は、自社のイベントなどを通じて、TonerSaverの拡販を図る。

 「トナーの使用量を節約するソフトというと地味に思われるかもしれないが、印刷コストの削減やグリーンITに関心を抱くユーザー企業は増えており、ビジネスは順調だ」。スプラインの雪野洋一社長は自信を見せる。

 TonerSaverは、プリンタメーカーにドライバソフトをOEM供給している英ソフトウェアイメージングと共同開発したもの。「トナーの使用量を節約するといっても、実際の印刷物は違和感なく文字が読める。実務には全く障害がない」。スプラインの雪野社長はこう言い切る。

「今年度だけで10万本売る」

 トナーの使用量を節約するソフトを投入しているのは、スプラインだけではない。ソフトメーカーのIDサイエンスと、ネットワークインテグレータのTCBテクノロジーズが、トナー節約ソフトを日本市場に出荷済みだ(表)。

表●トナーの使用量を節約する主なソフトウエア製品
表●トナーの使用量を節約する主なソフトウエア製品
*英ソフトウェアイメージングと共同開発
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 IDサイエンスは、イスラエルのソフトメーカーであるプリトンが開発したトナー節約ソフト「PretonSaver」を販売している。IDサイエンスの北村保雄社長は、「PretonSaverは、プリンタを大量導入したユーザー企業が、手軽に印刷コストを削減するための管理機能を標準で備えている点が強みだ」と強調する。同製品の販売実績は、世界で30万ライセンス以上である。

 PretonSaverの機能の特徴は、ユーザー企業のシステム担当者がトナーの使用量を一元管理できる点だ。利用者の職種や役職などに応じてトナー使用量を制限したり、カラーではなくモノクロ印刷に限定したりできる。両面印刷を禁止することも可能である。

 ただしPretonSaverの価格は1ユーザー当たり1万4000円で、Toner Saverの4900円に比べて高かった。IDサイエンスは拡販を図るため、11月に約1万円に値下げする。

 「今年3月からPretonSaverの販売を始めたが、価格がネックでいまひとつ売り上げが伸びなかった。値下げすれば、今年度だけで確実に10万ライセンスは売れるはずだ」。IDサイエンスのパートナー企業であるシーティーシー・エスピーの渡辺裕介第1営業本部営業推進部部長は、こう見通しを語る。

 TCBテクノロジーズは、自社開発したソフトの「TonerCutter」を今年7月に市場に投入した。同社のパートナー企業であるダイワボウ情報システムを中心に、3カ月で既に5000ライセンスを販売したという。

 「予想以上のペースで売れている。ユーザー企業の経営企画室やISO14000担当部門に提案すると、商談が早く進んでいくからだ」。TCBテクノロジーズの川口明男ミドルウェア部副部長は手応えをつかんでいる。

 TCBはTonerCutterの新版を11月にも出荷する計画である。新版では、利用者の印刷枚数や印刷状況などの情報を一元管理する機能を追加するという。