2008年10月1日に,スカパーJSATの東経124・128度CS放送「スカパー!」におけるHDTV(ハイビジョン)サービス「スカパー!HD」の本放送が始まった。ソニー製の受信機「DST-HD1」が家電量販店で10月15日に発売されたのに続き,11月上旬にはスカパー!ブランドの受信機「SP-HR200H」のレンタルも始まった。これらの受信機を使って,実際にスカパー!HDの番組を視聴してみた。今回はその体験記を報告する。


 レンタル用受信機「SP-HR200H」はスカパーJSATの専用窓口に申し込むと,2週間程度で加入者の手元に届くという。ただし,今回は日経ニューメディア編集部を経由して,試聴用の受信機を借りた。韓国HUMAXが製造したもので,地上デジタル放送チューナーも内蔵している(CASカードも2枚付いている)。チャンネルの選局やEPG(電子番組表)の動きはスムーズである(使用した機器や評価条件は以下の通り)。

・ 評価用モニター:シャープ「AQUOS LC-46RX5」
・ ブルーレイディスク(BD)レコーダー:シャープ「BD-HDW22」
・ 受信アンテナ:ソニー「SAN40DK3」(受信確認時は降雨なし)
・ 受信地点:東京都中野区(アンテナはそれぞれの受信機に直結)


BSデジタル放送との画質差は予想よりも大きくない

写真1:スカパーブランドの受信機(テレビの右下にある白いボックス)は,多彩なタイプのアンテナに対応している。HDTVサービスの受信レベルは,東経128度の衛星を使った「パーフェクTV!」サービスに比べて「20」程度低く出た
写真1
スカパーブランドの受信機(テレビの右下にある白いボックス)は,多彩なタイプのアンテナに対応している。HDTVサービスの受信レベルは,東経128度の衛星を使った「パーフェクTV!」サービスに比べて「20」程度低く出た
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 HDTVの画質については,11月9日夜に「TBSチャンネルHD」で放送された「ウルフルズ」の今年のライブなどで確認した。受信機とデジタルテレビを「HDMI」端子で接続したところ,46インチのフル画面だと「H.264」特有のエンコードノイズが出るが,解像度が高いためBSデジタル放送の「ビーエス・アイ」(BS-i)で過去に放送された「ウルフルズ」のHD素材の番組との画質差は,予想したよりも大きくないように感じた(写真1)。

 ただし,照明が点滅するシーンやカメラがズームアップするときにブロックノイズなどが出るのは,やむを得ないであろう。32インチ程度のデジタルテレビであれば,十分に鑑賞に耐えられると思われる。試しに,東経110度CS放送「スカパー!e2」のSDTV(標準画質テレビ)画質のTBSチャンネルを選局したところ,画質は雲泥の差があった。圧縮比率が高いとはいえ,H.264の画質でもそのクォリティーは良いといえる。

 音質については,HDMI接続ではダイナミックレンジが広く,素材がよければポテンシャルは高い。ところがアナログ音声端子経由では,レンジが狭くなる印象だ。ブルーレイディスク(BD)レコーダーによるHDD録画をアナログ端子経由で試みたところ,画質よりも音質の劣化を感じた。

 一方,現状ではHDTVの番組を,HDTV画質のまま録画することはできない。今後スカパーJSATが実施するファームウエアの書き換えにより,レンタル用受信機はHDTV録画が可能になる予定である。なお,地上デジタル放送の受信機能については,デジタル放送の普及に貢献できるものであり,2台目の受信機を用いた寝室や子供部屋などでのパーソナル視聴には必須と考えられる。次に述べるソニー製受信機との差異化の有力なポイントである。