新タイプのFMCサービスのいくつかは,内線電話の番号と屋外での電話番号とを共通化するワンナンバーを特徴としている。その特徴を見込んでサービスを選ぶユーザーも登場してきた。
銀座など全国72カ所に店舗を持つ靴や鞄の専門店かねまつは,モバイルと内線電話を一体化した上で通話コストも削減できる電話システムを検討。ワイヤレス区間の通信の安定性と安価な導入コストから,ウィルコムのW-VPNを選び,2007年12月の本社移転を機に導入した。銀座付近の各拠点を中心に約50台の端末を利用中で,端末の一体化と同時に,W-VPNの特徴であるオフィスの内外で内線番号を使って通話できるメリットを得た(図1)。
PBXとの連携が前提条件だった
検討を始めた当初,選択肢に挙がったのは,無線LANデュアル端末を利用するソリューションと構内PHSだった。老朽化していたPBXを入れ替える目的もあり,携帯電話間の定額サービスのようなPBXと連携しないサービスは選択肢に上らなかった。「無線LANは通話品質に不安があったため,安定性からPHSに決めた。導入コストも他の選択肢よりも安かった。ちょうどウィルコムがW-VPNが発表したタイミングだったのでその点も考慮した」(かねまつの下山耕樹執行役員IT統括部長兼社長室長)。
W-VPNのワンナンバーの仕組みは,PBXに持たせた番号変換テーブルと,ISDNが持つサブアドレス機能を活用して実現されている(図2)。仕組みは複雑だがメリットは分かりやすく,「社員にも好評」(同)という。
なお同社は,W-VPNの導入と同時に,本社の外線発信用にソフトバンクテレコムのおとくラインを導入した。今後は全国の拠点を結ぶ内線網としてもおとくラインを活用する考えだ。「拠点間をIP化して本社のIP-PBXとやり取りする方法も検討したが,VoIPゲートウエイの初期コストがかさむ。同程度の通信コストを削減できるのであれば,導入コストを抑えられるおとくラインにメリットがあると判断した」(同)。
実際,通信コストの削減という面では,W-VPNだけではなく,おとくラインの効果が大きな割合を占めているという。