通話料を下げ,導入コストを抑えられる新タイプのFMCサービス。その選択に際して考慮すべきことは主に4点ある。(1)利用はモバイル中心か内線中心か,(2)設備をアウトソースするかどうか,(3)内線通話を実現する無線技術の違い,そして(4)電話番号のワンナンバー化を必要とするかだ。

 以下では,この1年ほどの間に携帯電話と固定電話を組み合わせたソリューションを取り込み,効果を得つつあるユーザー企業──フィールズ,伊勢丹,クイーンズスクエア横浜,ワイズマート,かねまつの例から,最適解選びのポイントを見てみよう(表1)。

表1●5社の選択のポイント
新たにFMCサービスを導入した企業に導入の目的や選択のポイントを聞いた。
[画像のクリックで拡大表示]
表1●5社の選択のポイント<br>新たにFMCサービスを導入した企業に導入の目的や選択のポイントを聞いた。

携帯電話と固定電話間が定額

 モバイル活用とコスト削減の両立を目指していたフィールズが選んだのは,携帯電話と固定電話の間の定額サービスだ。

 同社は2007年9月,ソフトバンク・グループの携帯電話と固定電話間の定額サービスであるホワイトライン24を導入した。この時期は同サービスの正式サービス化前だが,テスト・マーケティングの一環としてサービス提供を受けた。ソフトバンクモバイルの携帯電話を会社が購入し,営業部員約460人に貸与。携帯電話間に加えて,携帯電話とオフィスの固定電話間の通話を定額にすることで,通話料を大幅に下げた。

 同社が電話システムの更改を検討したきっかけは,携帯電話をさらに活用しようと考えたこと。「従来は,社員個人が所有する携帯電話に一定額の補助を与えていた。ただ,補助額だけでは通信料をまかなえないことが多く,社員の間で携帯電話による通話を控える傾向が見られた」(コーポレート本部総務部総務課の平方翠氏)。営業効率を上げるために,モバイル環境の見直しが必須だったのだ。

 そこで同社が検討したのが,携帯電話/PHS事業者の通話定額サービスである。すぐにソフトバンクモバイルやKDDI,ウィルコムのサービスが候補に挙がったが,「PHSは地方に行くとエリアが狭くなるため,選択肢から外した」(平方氏)。

固定と携帯間定額によるコスト削減を重視

 最終的な選択の決め手になったのは,固定電話と携帯電話の両方を合わせたコスト削減だ。「ソフトバンクはおとくラインとの組み合わせで,携帯電話だけでは難しかった通信コスト削減を達成できる内容を提案してきた。これが決め手になった」(平方氏)。

 フィールズはおとくラインの導入に先立つ2007年4月に,ソフトバンクモバイルの携帯電話を会社から社員に貸与した。「会社から補助していた時と比べて,通信費は26%増えてしまった」(平方氏)。携帯電話間の通話は定額だが,それ以外の通話が従量課金になる点などが影響していた。

 こうした増分を2007年9月から本社へのおとくラインの導入によって相殺した。本社と外出している社員の間の通話を定額にすることで,「補助を出していた当時に比べ,トータルで通信コストを16%削減できた」(同)という(図1)。

図1●携帯と固定電話間の定額サービスで初めてコスト削減を達成<br>ソフトバンクモバイルの携帯間定額サービスを導入したフィールズだが,当初は通信コストは26%増加。2007年9月からおとくラインと携帯電話間の通話が定額になるホワイトライン24を先行導入したことで,携帯の貸与前と比べて通信費を16%削減した。
図1●携帯と固定電話間の定額サービスで初めてコスト削減を達成
ソフトバンクモバイルの携帯間定額サービスを導入したフィールズだが,当初は通信コストは26%増加。2007年9月からおとくラインと携帯電話間の通話が定額になるホワイトライン24を先行導入したことで,携帯の貸与前と比べて通信費を16%削減した。
[画像のクリックで拡大表示]

 実はフィールズの場合,外に出ている営業の社員が多い。トラフィックの割合としてオフィスへの通話が多いため,携帯と固定電話間の定額サービスが最適だったと言える。ただしフィールズが採用した携帯と固定電話間の定額サービスは,社内にある内線システムとは連携していない。平方氏は「営業部員の間では携帯電話が内線代わりになりつつある。今後は他の部門にも携帯電話を貸与し,固定電話は代表番号だけ残す形も考えられる」と説明。今までの常識にとらわれない利用形態を思い描いている。