家族のことで社会保険庁に申請する必要が生じた。まず、申請に必要な書類を確認しようと電話したが、これがつながらない。このところ問題になっている年金記録問題とはまったく関係のないことだが、その影響と考えている。結局、市役所に電話して教えてもらった。あらためて、年金記録問題の深刻さを実感し、「ねんきん特別便」の中身を見たときの違和感を思い出した。

「なんだこれ、もったいない」

 ねんきん特別便を手に持ち、その厚みに驚き、掲載されている情報に期待もした。しかし、開封してびっくり。特別便の核心である「年金記録のお知らせ」に記載されている情報は3行。勤務先名と加入期間のみ。標準報酬月額や標準賞与額は記載されていない。標準報酬月額とは,処理を簡単にするため,加入者が受けとる毎月の給料などの月額を区切りのよい幅で区分したもの。最低9万8000円(1等級)から最高62万円(30等級)までの30段階に分けられており,現在,上限を引き上げる案が浮上している。

 「なんだこれは。バカにしているのか」とまず思い、次に「たったこれだけの情報を送るのに、なんともったいないことをするんだ」と感じた。ねんきん特別便はすべての受給者と加入者に、2007年12月から2008年10月までに届けられた。その数約1億900万、かかった費用は百数十億円と言われている。費用の出所は税金である。

 厚みの正体は、確認と回答の方法の説明書である。見るのに1分もかからない「年金記録のお知らせ」を確認するための説明書が6ページ。このアンバランスさが笑える。

写真1●年金個人情報提供サービス
写真1●年金個人情報提供サービス
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 なぜ、標準報酬月額などが記載されていないのか。現行のねんきんシステムでは対応できないとされているが、標準月額報酬を加えた形で出力することは、ごく簡単だと思われる。年金システムには問題が多いと言われているが、それくらいどうってことないだろうと思う。年金システムには、これらの情報が格納されている。現に「年金個人情報提供サービス」を利用すれば確認できる(写真1)。Webページ上には出力できている。

 年金個人情報提供サービスは、社保庁が2006年3月31日に開始した。自分の年金加入記録をオンラインで照会できる。当時は気に留めなかった。というより、まったく知らなかった。

 利用は簡単である。Webページに基礎年金番号や氏名、生年月日、住所などを入力すれば、2週間くらいでユーザーID/パスワードが郵送されてくる。それを使って、サービスにログインして自分の年金記録が確認できる。

自身で調べるのが一番

 ねんきん特別便の発送を決めたのは昨年のこと。まだ標準報酬月額などの改ざん問題は発覚していなかった。これを隠すために記載しなかったと考えるのが自然であろう。

 標準報酬は2009年4月から年金加入者に順次送付される「ねんきん定期便」に記載される予定である。また、多額の税金が使われることも問題であるが、“改ざん被害者”は大変である。改ざんがあらためて大問題になり、いまでさえ混雑している社保庁の相談窓口に被害者が殺到する。電話はつながらない、窓口に行っても何時間も待たされることは必至である。その前に、年金個人情報提供サービスを利用して自身の記録を確認するとともに、ねんきん特別便の愚行を確認してみてはいかが。