4カ月ほど前に「データセンター建設ラッシュ,その先にあるもの」という記事を書いたが,その後もデータセンターにかかわる様々な動きが出ている。前回の記事では,国内と米国のデータセンターを対比させて,仮想サーバーや仮想ストレージを安価に提供する米国のデータセンターに国内の事業者がどう対抗していくのかが問われると問題提起した。

 その答えは出ていないが,データセンターの進化の方向を感じられる話題が日々,ニュースや解説記事として続々と報道されている。サーバーの熱対策が焦眉の急になっているが,その意味だけでなく今,データセンターが“熱い”。いくつかを話題をピックアップしてみたい。

 まずは,効率的な運用を支える技術。仮想化をはじめとする運用管理技術の向上には目覚ましいものがある。日立製作所が2009年7月に開設する予定の横浜データセンターでは,Virtageという仮想化技術を使い,ブレードサーバー上へのサーバー統合によって台数削減に効果を上げているという。

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 次世代のデータセンター構築を支援するベンダーや製品も増えてきた。EMCジャパンはこの11月にデータセンターの構築を支援する新しいコンサルティング・サービスを発表した。ミッション・クリティカルなシステムを止めずにデータセンターを統合・移転する方法を提案するものだという。

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 省電力など設備にかかわる話題も多い。データセンターの省電力はPUE(Power Usage Effectiveness)という指標で表される。データセンター全体の消費電力を,IT機器の消費電力で割った値で,数値が小さいほど省電力に優れていることを指す。この値が2を下回ると省電力に優れたデータセンターと言える。報道されている中では,米Googleの「1.2」が最も低い。また,米Hewlett-Packardのモジュラー型データセンターでは「1.25」を達成できるという。

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 PUEを下げるのには,様々な方法がある。伊藤忠テクノソリューションズでは,人を感知したときだけ明かりをつける照明を導入したり,暖気と冷気が混ざらないように空気を遮断するカーテンを設置したりすることで,無駄な電力を使わないようにしている。日立製作所では,屋上緑化により室内温度を最大で3度下げられたそうだ。

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 技術の移り変わりが激しいと言われるIT業界の中でも,データセンターにかかわる技術の進歩の速さは際立っている。データセンター上でシステムを構築・運用するユーザーが増えており,従来のデータセンターでは対応しきれなくなってきたからだ。そうした中,“次世代”と銘打ったデータセンターが続々と新設されているのだ。

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 このような動きをウォッチするために,ITproでは「データセンター・コンパス」という特番サイトを立ち上げた。データセンターを巡るトレンドや,間違いのない選び方を探っていく。ぜひ,データセンターの選定に役立ててほしい。