ソファーに寝そべり,ポテト・チップス片手にテレビのリモコンを操作する。俗に言う「カウチポテト」である。視聴率には割と敏感。より高視聴率の番組を好む。とはいっても,常に集中して観ているわけではない。何かをしながら見る“ながら視聴”が意外と多い---。テレビとの付き合い方としては,一般的なものだろう。

 インターネットのコンテンツも,テレビと同じようなスタイルで“ながら視聴”できる時代が来るのではないか。ベンチャー企業のアノドスが開発し世に問うた「ANOBAR」を見たときに,こう感じた(関連記事,注:執筆時の2008年11月11日時点で,ANOBARは販売されていない)。

 このANOBAR,その用途の典型例を一口に言えば「視聴中のテレビ放送に文字情報を付加するインテリア」となる。ハードウエアは横長の形状をしており,短い文章を電光掲示板のスタイルで横スクロール表示する。テレビ画面の下の部分に置いて利用することで,「テレビ放送に“字幕”を表示するための外部装置」となる。

テレビ放送番組の実況を表示する

 ANOBARはテレビ放送にどのような文字情報を付加するのか。典型的な使い方では,2ちゃんねる(2ch)掲示板の書き込みとなる。

 2chには,今放送中のテレビ番組に連動して実況中継(感想)を書く掲示板が存在する。ANOBARの画面に2chの実況中継コンテンツを表示することにより,今この瞬間に見ているテレビ番組の面白さを,言い方はやや古めかしいが全国の「お茶の間」で言葉によって共有できる。2chへの書き込みにはパソコンなど既存の入力デバイスが必要だが,テレビ放送とともにソファーで寝転びながら実況を眺める使い方であれば,パソコンは不要だ。

 ANOBARのハードウエアの実態は,横長のFED(Field Emission Display,電界放出ディスプレイ)パネルを備えたx86系パソコン・ベースのデバイスである。OSにはWindows XP Embededを採用し,アイデンティティとしての電光掲示Webブラウザを搭載する。

 実態は汎用のインターネット端末であるため,2chの実況板に限らず,RSS配信などHTTP経由で入手可能な任意のテキスト情報を表示できる。こうした仕組みはソフトウエアとしての実装では珍しくないが,ハードウエアを伴った装置としては,電車の電光掲示や街中のデジタル・サイネージといった商業設備を除けば,今までほとんど無かった。