写真1●エーピーシー・ジャパン ソリューション事業部 シニアマネージャーの佐志田伸夫氏
写真1●エーピーシー・ジャパン ソリューション事業部 シニアマネージャーの佐志田伸夫氏
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 「データセンターのグリーン化は,電源や冷却といった設備の省電力化が鍵を握る」──。2008年10月14日に開催されたグリーンITフォーラムで,エーピーシー・ジャパン(APCジャパン)ソリューション事業部 シニアマネージャーの佐志田伸夫氏が講演し,物理インフラの省電力化のポイントについて語った。

 エーピーシー(APC)は,UPS(無停電電源装置)をはじめ,データセンター向けの空調装置や冷却装置などを提供している。データセンターの省電力化を推進する業界団体のグリーン・グリッドに設立当初から参加し,消費電力の測定方法の標準化や評価指標の規格作りに取り組んできた。

 「グリーン・グリッドでは,データセンターの電力効率を評価する指標として,DCiEとPUEの2つを提唱している」(佐志田氏)。DCiE(Data Center infrastructure Efficiency)は,IT機器による電力消費量をデータセンター全体の消費量で割ったもの。一方のPUE(Power Usage Effectiveness)はその逆数で,データセンター全体の電力消費量をIT機器で割ったものである。

 実際のデータセンターのDCiEはどれくらいなのか。APCの調査によると30%程度という。「IT機器以外が消費する70%のうち,45%が冷却装置,25%が電源によるもの。こうした物理インフラによる消費電力をいかに抑えるかが,DCiEを向上させる鍵になる」と佐志田氏は主張する。

モジュール式の装置で電力効率を高める

 「物理インフラの電力効率を上げるには,いくつかのポイントがある」と佐志田氏は話しを進める。1つめは装置のモジュール化。APCではモジュール式のUPSや冷却装置を用意しており,必要なときに必要なモジュールを設置していけば,電力効率を高めることができるという。

 同氏によれば,データセンターやサーバー室でUPSの稼働率は,一般に20~30%程度。それと言うのも,データセンターを作る場合,5年先~10年先の稼働状況を予想して設備を導入するため,開設当初の稼働率は10%前後というところも少なくない。こうしたオーバーサイジングによる電力のムダをなくすには,モジュール式の装置を段階的に導入していくやり方が有効だ。

 2つめは,気流設計を実施して空調機の冷却効率を高めること。ホットアイル(IT機器からの排気を通す空間)とコールドアイル(空調機が送り出してサーバーが吸引する冷気を通す空間)をきちんと分けるレイアウト設計がポイントになる。ラックを2列に並べる場合は,ラックの前面同士を向かい合わせてコールドアイルを作り,背面同士を向かい合わせてホットアイルを作るのが一般的だ。

 「最も効果的なのは,ホットアイルをパネルなどで囲ってしまう方法。米国サンタクララにあるサン・マイクロシステムズのデータセンターは,このやり方でPEU1.3を実現したと聞いている」と佐志田氏は話す。

 さらに,データセンター内の設備による電力消費を日常的に監視することも重要だ。APCは,IT機器,UPS,空調機などの電力消費や装置の温度の状況をモニタリングするためのツールとして「Capacity Manager」を提供している。

 「物理インフラの省電力対策を組み合わせれば,データセンターのPUEは着実に下げることができる。できることから取り組んでほしい」と最後に語り,講演を締めくくった。