入れるべきか、入れざるべきか。それが問題だ──。登場から2年弱。企業は今、Windows Vistaを導入するかどうかの決断を迫られている。パソコンの入れ替えはおよそ4年サイクル。来春には多くの企業がそのときを迎える。Vistaを選んだ企業はどこを評価したのか。飛ばす決断をした企業は何を考えたのか。それぞれの本音を聞いた。

 MacやLinuxのユーザーを集めた「次世代Windows」のデモ。ほとんどの参加者が高く評価したのは、実は現行版のVistaだった―。今年7月末、米マイクロソフトが実験のビデオ映像を公開したのは、焦りの表れか。

 Vistaの企業向け出荷が始まってから2年弱。評判が高いとは言い難い。いくつかの大規模導入事例は聞こえてくるが、大多数の企業はいまだに様子見の態度を崩していない。

 だがマイクロソフト日本法人でVistaの企業向けマーケティングを担当する中川哲ビジネスWindows本部長は落ち着きはらう。「企業の導入ペースは予想通り」と冷静に語る。

XPよりも出足は好調

 本誌が入手したマイクロソフトの社内資料を見る限り、確かに企業におけるVistaの導入ペースは一世代前のWindows XPとほぼ同じ。Vistaを導入した企業の割合は出荷開始から22カ月が経過した今年9月の時点で10%強と、同時期のXPより若干高い(図1)。

図1●Windows XPとVistaの企業における導入状況(マイクロソフト調べ)<br>Vistaの導入ペースはXPに比べて見劣りしないという
図1●Windows XPとVistaの企業における導入状況(マイクロソフト調べ)
Vistaの導入ペースはXPに比べて見劣りしないという
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 「企業向けのOSは動作検証などが終わって導入が本格化するまで最低でも18カ月はかかる。Vistaの導入が特に遅いわけではない」と中川部長は説く。

 マイクロソフトはXPのときの経験から、今年末からVistaの企業向け導入が加速するとみる。ガートナージャパンの針生恵理シニア アナリストも、この予測を支持する。「企業向けパソコンの入れ替えサイクルはおおむね4年半。過去のトレンドを考えると、年末から来春にかけて次の大量入れ替えの波がきて、数多くのVista搭載機が企業に入っていく」。

 いち早く全社レベルでVista導入を決めた企業も少なくない。一方、Vistaを綿密に調べた結果、導入を見送る決断を下した企業もある。

 それぞれの決断の背景に何があったのか。紹介しよう。