写真1●講演する日立製作所 アウトソーシング事業部 データセンタ本部事業推進部の平松豊氏
写真1●日立製作所 アウトソーシング事業部 データセンタ本部 事業推進部の平松豊氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「省電力サーバーから仮想化,運用管理に至るまで,グリーンITの最新技術を新しいデータセンターで実証していく」――。2008年10月14日に開催されたグリーンITフォーラムで,日立製作所 アウトソーシング事業部 データセンタ本部 事業推進部の平松豊氏が講演し,2009年7月に横浜に開設するデータセンターが最先端の省電力技術の実験場であると強調した(写真1)。

5年間で電力消費量を最大50%削減

 講演の冒頭で平松氏は,IT機器による電力消費量が急増している現状について説明した。「動画配信サービスの拡大などにより,インターネットに流通するデータ量は,2025年には現在の200倍になると予想されている」(同氏)。経済産業省の調査によれば,現在のIT機器による電力消費量は年間約500億kWhで,日本全体の5%程度。だが,このまま省電力対策をとらなければ,2025年には現在の5.2倍の2400億kWhに達し,日本全体の20%を占めるようになるという。

 そこで日立製作所では,2007年秋からデータセンターの省電力化プロジェクト「CoolCenter50」に取り組んでいる。「今後5年間で,データセンターの電力消費量を最大50%削減することが目標」と平松氏は強調する。この目標を実現するため,サーバー,ミドルウエア,ストレージ,ルーター/スイッチの4製品分野について「Harmonious Green Plan(ハーモニアス・グリーン・プラン)」を策定して省電力技術の開発を進めているという。部品や装置本体などハードの省電力化だけでなく,システム全体としてエネルギー効率向上を図るための運用技術にも取り組んでいるのが特徴だ。

 運用技術の中でも特に注力しているのが,Virtageという仮想化技術。同社のブレードサーバー「Blade Symphony」で既に採用しており,サーバー統合による台数削減に効果を上げているという。また,統合システム運用管理ツールの「JP-1」は,IT機器の電力監視と表示,制御などの機能を備え,「きめ細かい省電力運用を実現できる」(平松氏)。

最新のデータセンターをグリーンITの実験場に

 データセンターを省電力化するには,最新技術を導入するしかないかと言えば,そうではない。「データセンターのグリーン化を図るうえで,重要なポイントが5つある」と平松氏は指摘する。

 まず1つめは,高効率な機器および設備を導入すること。2つめは,照明機器と人感センサを連動させるなどして,ムダな電力消費を抑えること。3つめは,IT機器を効果的に冷却するため,気流設計を実施すること。冷気と暖気の流れをきちんと分けられる設備レイアウトが鍵になる。4つめは,空調を効率的に運転すること。5つめは,フリーアクセスの床下ケーブルをきちんと整理することだ。

 日立では,2009年7月の開設を目指し,新しいデータセンターを横浜に建設中だ。「最先端のグリーンIT技術を駆使することで,このセンターのPUE(電力使用効率指標)は1.6以下を目指す」(平松氏)。実現に向けては,ハーモニアス・グリーン・プランによって開発した省電力技術や仮想化技術を導入するほか,直流電源や変圧器などにエネルギー効率の高い設備を採用する計画という。また,同施設内には,統合管制センターを置き,IT機器や設備の稼働状況を“見える化”し,運用技術の検証にも取り組んでいく。

 「日立は全国20カ所で展開しているデータセンター事業で様々な省電力化の取り組みを実践している。そこで得たノウハウと,グループで開発した省エネ製品とを組み合わせ,顧客の環境に応じたベスト・ソリューションを今後も提供していく」と平松氏は語り,講演を終えた。