「いろいろな調査結果を見ると,2~3年後に新規のIPv4アドレスの取得が困難になることは確実だ」。2008年9月5日に開催された「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」の発足式で,IPv6普及・高度化推進協議会 専務理事の江崎浩東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授は訴えた(写真1)。

写真1●官民を挙げてIPv4アドレス枯渇対策に取り組む
写真1●官民を挙げてIPv4アドレス枯渇対策に取り組む
総務省と通信・インターネット関連13団体が2008年9月5日に開催した「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」発足式の様子。IPv6普及・高度化推進協議会の村井純会長,江崎浩専務理事,荒野高志常務理事,総務省総合通信基盤局の桜井俊局長らが出席。

 このタスクフォースは総務省と通信・インターネット関連の13団体が設立した組織。インターネットに関係する各業種ごとに取り組むべき対策をアクション・プランとしてまとめ,推進体制を整える。この背景には,いよいよIPv4アドレスの枯渇という未曾有の危機が目前に迫り,官民を挙げて全国規模で対策活動を進めていく必要が出てきたことがある。

 IPv4アドレスはインターネットで通信するために必要な番号。全世界で一意に決められており,インターネット上のサーバーやパソコンに割り当てられる。一般には,単に「IPアドレス」と呼ぶことが多い。32ビット長のIPv4アドレスは全部で約43億個ある。インターネットが作られたころは無限と思われたアドレスだが,それがとうとう尽きてしまう。新規のユーザーやサーバーに割り当てるアドレスがなくなるわけだ。

今回は本当にIPアドレスが枯渇する

 図1は,IPv4アドレスの残存数である。長年IPv4アドレスの消費をウォッチしてきたAPNIC(エーピーニック)のチーフ・サイエンティスト,ジェフ・ヒューストン氏が作成したものだ。

図1●IPv4アドレスは2011年よりも前に枯渇する<br>ジェフ・ヒューストン氏の2008年9月時点の予測。2010年10月にはIANAが各地域のRIRに払い出すIPv4アドレスが尽き,さらに2011年10月にはRIRが各地域で配布するアドレスもなくなる。
図1●IPv4アドレスは2011年よりも前に枯渇する
ジェフ・ヒューストン氏の2008年9月時点の予測。2010年10月にはIANAが各地域のRIRに払い出すIPv4アドレスが尽き,さらに2011年10月にはRIRが各地域で配布するアドレスもなくなる。
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 IPv4アドレスは,国際的なアドレス管理団体であるIANA(アイアナ)が管理している。IANAは,世界の各地域を受け持つRIRと呼ぶアドレス管理団体にアドレス・ブロックを払い出す。そしてRIRが,その地域に含まれる各国のアドレス管理団体にアドレス・ブロックを配布する。例えば日本の場合は,アジア太平洋地域を受け持つRIRであるAPNICからJPNIC(ジェーピーニック)がアドレスを取得し,日本国内のISP(インターネット接続事業者)などにアドレスを割り振っている。

 ヒューストン氏の最新の予測(2008年9月時点)では,IANAがRIRに払い出すアドレスは2010年10月に枯渇するとされている。RIRから各国のアドレス管理団体やISPに払い出すアドレスがなくなるまでにはもう少し余裕があるが,それでも2011年10月にはなくなってしまう。

 総務省の「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」(IPv6研究会)が2008年6月にまとめた報告書では,そうした予測などを踏まえ,日本国内でIPv4アドレスを補充できなくなる時期は早ければ2011年初頭と予測している。