SLAとは,サービスを提供するベンダーとサービスを利用する企業の間で,サービスのレベルを取り決めた合意のこと。エンタープライズ市場におけるアウトソーシングでは常識とも言えるSLAが,クラウド・コンピューティングの急所になっている。

 例えば,ストレージ・サービスのAmazon S3が設定するSLAは「月当たりの稼働率が99%を下回った場合は利用料金の25%を,稼働率が99%から99.9%の間までだった場合には使用料金の10%を差し引く」というもの。これは,1カ月が31日である場合に,月当たり44分までのサービス停止は「ユーザーとの合意の範囲内」であり,料金が一切割り引かれないことを意味する。月当たり7時間以上サービスが停止した場合でも,料金の25%が割り引かれるだけである。エンタープライズ市場におけるSLAと比較して,かなり低い状態にあると言えるだろう。

 さらに,既に大量の実績があるAmazon EC2の場合,有料のサービスであるにも関わらず,いまだに「ベータ・サービス」という扱いだ。一切のSLAが設定されていない。加えてAmazon EC2では,仮想マシンを運用するサーバーに障害が発生して仮想マシンのインスタンスが失われると,仮想マシンのディスク内容が失われる。

 このような状況に対応するためAmazonでは,EC2の仮想マシンに ブロック・アクセスが可能な外付け ディスクを割り当てる「Amazon EBS (Elastic Block Store)」というサービスを2008年8月に追加した。Amazon EBSに書き込んだデータであれば,仮想マシンのインスタンスが無くなっても,失われない。

 Microsoftでは2009年前半に開始する「SQL Server Data Services」のようなプラットフォーム・サービスに関して,「エンタープライズ・クラスのSLAを提供する」としており,先行するAmazonをSLAを武器に追い上げようとしている。