クラウドに興味を持っている顧客はいる。だが必ず「信頼性は?」と聞かれる。それは残念ながら,今のところないに等しい。「自己責任で使ってください,その代わり安いですよ」。そういうものだと理解している。

 クラウド上で我々がビジネスをしていくには,サービスレベル管理やソフトウエアのライセンス問題など,多くの課題がある。これを解決できないと,なかなか普及しないと思う。一方では,既にクラウド上でどんどんアプリケーションを作っている企業群があり,それが広がっているのも事実だ。

最初は「オプション」的な使い方

山田 伸一 NTTデータ 常務執行役員  技術開発本部長 CTO
山田 伸一 NTTデータ 常務執行役員 技術開発本部長 CTO
写真・丸毛 透

 情報システムの処理量のピークは,企業によって異なる。そしてたいていのシステムは,ピーク時以外は遊んでいる状態だ。どこかに大きなリソースのプールがあって,必要なときに必要なだけ切り出して使えれば,当然,効率もよくなるし省エネにもなる。今,データセンターの中では,省エネの一環として,PCサーバーを仮想化して複数に分割し,利用率をコントロールしている。これをもっと大きな範囲でやるのがクラウドということになる。

 クラウドの浸透はゆっくり進むと思う。仮説だが,最初は「オプション」的な使い方からだ。米New York Timesが,4T(テラ)バイトの新聞記事データのPDF化をAmazon EC2を使って24時間で処理した例がある。システムの利用コストは240ドル,要員はプログラマ1人ということだ。

 次に起こるのは,プライベートにクラウドを持つことではないか。企業内には多くのサーバーがあり,大部分は遊んでいる。特定の企業の中にクラウドを作ることにも十分意味がある。最後には,本当に巨大なクラウドの中で,自分が必要なところだけを使う世界になる。

 NTTデータは,クラウド的なサービスの提供も,プライベート・クラウドの構築も,その上で動くアプリケーションの構築・運用も,すべてやれるし,どれも必要だと考えている。オープンソースや仮想化など,必要と思われる技術の研究は続けている。

必要なら提案する

 SI企業であるNTTデータのコアは,アプリケーションであり,業務ノウハウである。それから,どんどん変わる技術を,顧客に代わってウォッチし,最善のものを選ぶことだ。

 Amazonなどのサービスも必要があれば提案できるよう勉強している。New York Timesのような提案も当然,できないといけない。SIがどう変わるかではなく,顧客のビジネスがどう変わるかを考えている。

 例えば今,多くの日本企業のシステムは夜中には止まっている。しかし今後,ユーザーの活動範囲は世界中に広がっていくだろう。そうなると24時間稼働という要件が増えてくる。そのときには,できるだけ安くてフレキシブルで効率のいいインフラを提供したい。その一つにクラウドがあるのかもしれない。