2007年1月に「サービスプラットフォームソリューション事業」を立ち上げた。システムの所有からサービスの利用へと企業が動く中で新しい価値を提供し続けるためには,ITサービスの新しい提供基盤が要るからだ。

 NECは従来,個別のシステム構築をビジネスの中核としてきた。だが,我々が作ってきた個別システムには,多くの共通点がある。そこを,最新の技術で「サービスプラットフォーム」に集約すれば,個別のシステム開発を最小限に抑え,必要な機能だけをサービスとして提供できるようになる。

 サービスプラットフォームを軸とした事業展開の中には,SOAによるサービス連携といったクラウドの主要技術や,クラウド的なビジネスモデルへの取り組みも含まれる。SaaSもPaaSも当然考えている。

三つのモデルで推進

富山 卓二 NEC 執行役員
富山 卓二 NEC 執行役員
写真・丸毛 透

 サービスプラットフォームを利用することで,大きな効果が期待できる。その一つが,SCEM(サプライチェーン・イベント・マネジメント)だ。

 RFID(無線ICタグ)を部品や商品に付けると,生産,流通,販売というように業界をまたいで移動していく。これを追跡するには,業界ごとに情報を取り込むポイントを作らなくてはならない。これを各社が独自にやるのは大変な無駄だ。そこで,追跡データはすべてセンターで集約し,それを情報サービスの形で各社に提供する。ただ,こうした大規模な事例が出てくるのは少し先だろう。

 現在,サービスプラットフォーム事業は三つのモデルで進めている。第一は,NEC自らがサービス事業者になること。第二は,サービス事業者向けにインフラを提供すること。第三は,サービス事業者のうち,特にSaaS事業者を対象としたサービス基盤「RIACUBE」を提供することだ。

 サービスプラットフォームを活用したソリューションの成功例も出始めた。「デジタルサイネージソリューション」は,デジタルサイネージによる屋外広告に,効果測定の機能を加えたものだ。これは既存の業種特化型の商材にサービスプラットフォームを組み合わせて作った。多くの業種から引き合いが来ている。

最適解を提供したい

 個別のシステム開発も必ず残るし,ここは大きな市場だ。米国の製薬会社の話だが,社内システムを刷新するに当たり,「自前で再度作るもの」「パッケージを利用するもの」「クラウドに乗せるもの」に分けたという。新薬開発で使うシミュレーション・システムなど,コア部分は外に出さずに自前で作るそうだ。

 日本でも,最近は「使えるものは使う」という考えにシフトするユーザーが出てきた。今後は,複数の提供手段を最適に組み合わせることが重要になる。NECも「システム開発も,パッケージ導入もできるし,PaaS,SaaSもOK」と言えるようにしていく。