三澤 智光 日本オラクル 常務執行役員 製品戦略統括本部長
三澤 智光 日本オラクル 常務執行役員 製品戦略統括本部長
写真・丸毛 透

 今,確実に言えるのは,Oracle自身が雲(クラウド)の一つになること。そして,雲を作る人たちにテクノロジを提供していくということだ。Oracleの守備範囲は基幹系,言わば絶対にデータが保証されなければいけない領域なので,非常にクリティカルな雲になる。

 クラウドは「使いたいサービスを選んでマッシュアップする」という世界。サービスはたくさん持っている方がよい。「Oracle E-Business Suite」や「Oracle CRM」は既にSaaSで提供している。今後「JD Edwards」もサービスにするし,「Fusion Applications」もマッシュアップ可能な形で出す。そのほかにも,多くのサービスやそれを支えるプラットフォーム機能を準備している。

 日本でも,Oracleのクラウドを使っている企業は多い。Oracle CRMはもちろん,Oracle E-Business Suiteのユーザーも数社ある。ただ,クラウドの導入にはBPR(Business Process Reengineering)が必要だ。特に大企業ではエンタープライズ・アーキテクチャが必須だが,業務の整理を済ませた企業は少ない。

 クラウドのサービス事業者が,Oracleのテクノロジを使うケースも増えるだろう。ノウハウは潤沢にある。

 Oracleは1996年ごろから,サービス事業者の黒子的役割を果たしてきた。AmazonやYahoo!,Googleといったクラウド企業から膨大な宿題をもらっている。それを受けて,製品を強化してきた。

 また,米国にあるOracleのデータセンターは,国内大手のデータセンターよりはるかに大きい。日本で運用しようとすると,2000~3000人の要員が要る。Oracleだと200~300人で済む。運営や設計のノウハウが違うのだ。

可用性と拡張性に全力

 今後,いろいろなベンダーが提供するクラウド同士で連携が必要になる。連携が必要になるほど「オープン・スタンダードに徹底的に準拠する」という,Oracleの従来からのコンセプトがますます生きる。

 インフラの領域でも,様々なプラットフォーム製品を“クラウドready”にする作業を進めている。例えば,SaaSのインフラでは,サーバーに加えストレージも仮想化する必要があるが,ここは既に終えた。拡張の容易さ,安価な汎用サーバーによるグリッド環境の構築も,既に出来ている。

 さらに「Oracle Database 11g」や「Fusion Middleware」を強化して,可用性と拡張性を高められるよう全力で進めている。全体を監視する仕組みとしては「Enterprise Manager」があり,複数のデータセンターを一括管理する。この環境で稼働するアプリケーションも増やしており,「Fusion Applications」という形で結実させる。

 社外に出せないアプリケーションもある。そこは,クラウドとSOA(Service Oriented Architecture)で連携させ,一つのアプリケーションのように使える環境を提供する。